不器用な彼氏
見る予定だった映画の公開期間もまだ余裕があることを確認し、映画はまた今度にすることにして、俺はアイツを連れて、自宅に戻った。
地元の駅前で、いらないというのに、『手ぶらじゃいけないから』と、洋菓子店でケーキを買い、自宅に向かうと、玄関の脇に止まっているはずの姉貴の車が無い。
スマホを確認すると、姉貴からのメールが1件。
【ちょっと買い物行ってくるから、先に上がって待っててもらって。彼女、帰らせたら、ぶっ殺す】
俺はため息を吐きながらアイツに簡単に説明し、仕方なく先に上がって、姉貴を待つことにする。
アイツは、少し緊張しているようで、玄関先で立ち止まると、身内が気にもしていなかった玄関フロアの生花に、偉く感動して、素敵だという。
そういうところに全く無頓着な家族に、スルーされながらも手入れを欠かさない母さんが、報われた瞬間だった。俺が褒められたわけではないが、なんとなく嬉しくなる。
姉貴がエアコンを消し忘れたために、快適な温度のリビングにアイツを案内すると、とりあえず麦茶を入れてやる。
対面式のカウンターから、いつも自分が寛いでいるダイニングテーブルに。アイツが座っていているのが見えて、妙に落ち着かない。
その後も、すぐ帰るという姉貴はなかなか戻らず、いい加減ただ待つ時間にも飽きてきた頃、ふと来週の旅行の為に買った情報誌の存在を思い出し、アイツに『見るか?』と問うと、2つ返事で見たいという。
それならばと、自分の部屋から取って来ようとすると、アイツが俺の部屋が見たいから一緒に行きたいと言い出した。
もうすぐ姉貴が帰ってくることが分かっているからなのか、いくらなんでも、誰もいない家の男の部屋に安易に行くなど、あまりの警戒心の無さに呆れかえる。
俺は適当にあしらおうとしたが、アイツはなかなか引かず『ちょっとだけ』と切望され、仕方なく承諾し、2階の自室に連れて行く。
2階に上がる階段を上っている途中、姉貴から、“後10分くらいで着く”というメールが入った。
まあ、10分くらいなら、俺の理性も保つだろう。
一応、万が一のことも考えて、自室のドアを開け放ち、最もらしい理由をつけては、アイツの逃げ道を確保しておく。
何で男の俺が、ここまでしなければ…とも思ったが、数日後の旅行で、たっぷり時間をかけて手に入れるはずのものを、こんなところで変に手を出して、今更、最悪、逃げられたりしたら、堪ったもんじゃねぇ。
地元の駅前で、いらないというのに、『手ぶらじゃいけないから』と、洋菓子店でケーキを買い、自宅に向かうと、玄関の脇に止まっているはずの姉貴の車が無い。
スマホを確認すると、姉貴からのメールが1件。
【ちょっと買い物行ってくるから、先に上がって待っててもらって。彼女、帰らせたら、ぶっ殺す】
俺はため息を吐きながらアイツに簡単に説明し、仕方なく先に上がって、姉貴を待つことにする。
アイツは、少し緊張しているようで、玄関先で立ち止まると、身内が気にもしていなかった玄関フロアの生花に、偉く感動して、素敵だという。
そういうところに全く無頓着な家族に、スルーされながらも手入れを欠かさない母さんが、報われた瞬間だった。俺が褒められたわけではないが、なんとなく嬉しくなる。
姉貴がエアコンを消し忘れたために、快適な温度のリビングにアイツを案内すると、とりあえず麦茶を入れてやる。
対面式のカウンターから、いつも自分が寛いでいるダイニングテーブルに。アイツが座っていているのが見えて、妙に落ち着かない。
その後も、すぐ帰るという姉貴はなかなか戻らず、いい加減ただ待つ時間にも飽きてきた頃、ふと来週の旅行の為に買った情報誌の存在を思い出し、アイツに『見るか?』と問うと、2つ返事で見たいという。
それならばと、自分の部屋から取って来ようとすると、アイツが俺の部屋が見たいから一緒に行きたいと言い出した。
もうすぐ姉貴が帰ってくることが分かっているからなのか、いくらなんでも、誰もいない家の男の部屋に安易に行くなど、あまりの警戒心の無さに呆れかえる。
俺は適当にあしらおうとしたが、アイツはなかなか引かず『ちょっとだけ』と切望され、仕方なく承諾し、2階の自室に連れて行く。
2階に上がる階段を上っている途中、姉貴から、“後10分くらいで着く”というメールが入った。
まあ、10分くらいなら、俺の理性も保つだろう。
一応、万が一のことも考えて、自室のドアを開け放ち、最もらしい理由をつけては、アイツの逃げ道を確保しておく。
何で男の俺が、ここまでしなければ…とも思ったが、数日後の旅行で、たっぷり時間をかけて手に入れるはずのものを、こんなところで変に手を出して、今更、最悪、逃げられたりしたら、堪ったもんじゃねぇ。