不器用な彼氏
海沿いにある、その水族館に着いたのは、昼の12時半を少し過ぎていた。

こじんまりとした印象の、その水族館は、ネットなどでも評判で、平日なら、比較的混雑も少ないという口コミを信じてきたのだけれど、さすがに夏休み中の金曜日ということもあり、思っていたより家族連れやカップルが多く見受けられる。

『水族館、久しぶりー』

入り口でチケットを購入し、入館のゲートに並ぶと、ついアラサーということも忘れて、ワクワクしてきてしまう。

『俺なんか、小学校の遠足以来だ』
『え!嘘でしょう?』
『嘘ついてどうする』
『だって、今まで、その…デートとかでも、行かなかったの?』

水族館といえば、女子が好きそうだし(私が好きなだけかしら?)、何となくデートの定番のような気もしたのだけど…。

『いや無いな、つーか、そもそもテーマパーク系、行ったことが無い』

きっぱりと否定。

海成が、過去にどんな女性と付き合ってきたのかなんて、想像もしたくないけれど、こんな風な話を聞くと、一体今まで、恋人とどんな付き合い方をしてきたのか、気になってしまう。


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