不器用な彼氏
そこから先は、少し広めの幅の階段になっていて、下り階段が、海岸手前の車道まで、続いている。

『いつまで笑ってるんだ』
『フフ…笑ってないよ?』
『…ったく、お前なんか勘違いしてないか?』
『勘違い?』

右側を歩く海成を見上げると、さっきの余裕のない顔はどこえやら、いつものポーカーフェイスで、前を向いたまま、

『確かに、お前に、森下ほど男を引き寄せるものはない』

何故かきっぱりと、結構グサリと来ることを言う。しかもなぜ今、森下さん?
若干腑に落ちない気持ちで聞いていると、

『…だが、それと、お前の持つそれは、関係無いだろ』
『?どういう意味?』
『…どんな男でも惹かれるような魅力は、必要ないだろって意味だ』

やっぱりよくわからない。女性としては、魅力的な方が断然良いに決まってる。

『でも、海成だって、自分の恋人は、魅力ない女性より、魅力がある女性の方が良いでしょう?』
『お前に魅力ないなんて、誰が言った?』
『…え?』

即座に、怒った口調で言われ、見上げた海成の横顔が、いつになく真剣で、ドキリとする。
繋がれた右手が、心なしか強く握られた気がした。

『第一、お前に魅力がなきゃ、俺は今、ここにいないだろ』
< 190 / 266 >

この作品をシェア

pagetop