不器用な彼氏
砂浜に降りると、既にたくさんの見物客が鮨詰め状態で、通路として確保されている道も、人で埋まっていて、歩きづらい。

花火がスタートするまで、後10分。

皆、少しでもいいポジションをと、探しているようだ。
こういう時、背の高い彼氏を持つと助かる。

私には全くわからない砂浜全体の状態が、海成には上から見てわかるようで、手を引かれて進むと、波打ち際に近い一角に、かなり広い範囲をビニール製の布で区切られたスペースがあった。

その入り口に立つ青年に、海成がフロントでもらった入場券を見せると、券と交換に、使い捨てのレジャーシート1枚と、うちわを2枚を手渡され、『お好きなところで、ご覧くださいね』と、エリア内に入れてくれた。

特別観覧席といっても、座席が並べられているわけでもなく、区切られたエリア内で、自由な場所にシートを敷いて、観るだけのものらしい。

とはいえ、それでも一部の協賛している宿の宿泊客や、地元の地域支援者のみの限られた人数しか入れないため、エリア内は外の混雑が嘘のようにまだまだ余裕があり、花火の上がる位置からすると、どの場所から見ても、ベストポジションに違いなかった。
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