不器用な彼氏
午後8時。
フッと、会場内の照明が暗くなる。花火が上がるまでのカウントダウンが始まったようだ。
誰がそうしろと言ったわけでもないのに、一瞬会場が静まり、波の音だけが聞こえてくる。
年甲斐もなく、高鳴る鼓動。
海上の一点から閃光が上がり、まっすぐ天に伸びていく。
次の瞬間、真っ暗な夜空に、鮮やかな色とりどりの光が放射線状に散って瞬き、同時に、ズドンとお腹に響く雷鳴のような音。
目の前で、自分の視野ぎりぎりまで広がる花火の大きさに、感嘆の声が漏れる。
『凄いね』
隣の海成に声かけると、『ああ』と、空を見上げたまま、答える。
次々に上がる様々な花火と共に、遅れてくる爆発音が、雨雲から轟く雷鳴に似ていて、ついあの嵐の夜を思い出してしまう。
『腹に直接、ズシッと、来るな』
『…花火の音は、平気なんだ?』
『は?』
『…進藤さん、怖いなら、手、握っててあげましょうか?』
あの時と同じセリフを、にっこり微笑みながら海成に向かって発してみると、予想通り、耳まで真っ赤にしながら、『お前…殺すぞ』と、凄まれる。
久々に聞いた、最大級の暴言に、怖いどころか思わず吹き出してしまい、ますます不機嫌になってしまう海成。
目の前では美しい仕掛け花火が夜空を彩っているというのに、片膝をたてて不貞腐れ、そっぽを向かれてしまう。
フッと、会場内の照明が暗くなる。花火が上がるまでのカウントダウンが始まったようだ。
誰がそうしろと言ったわけでもないのに、一瞬会場が静まり、波の音だけが聞こえてくる。
年甲斐もなく、高鳴る鼓動。
海上の一点から閃光が上がり、まっすぐ天に伸びていく。
次の瞬間、真っ暗な夜空に、鮮やかな色とりどりの光が放射線状に散って瞬き、同時に、ズドンとお腹に響く雷鳴のような音。
目の前で、自分の視野ぎりぎりまで広がる花火の大きさに、感嘆の声が漏れる。
『凄いね』
隣の海成に声かけると、『ああ』と、空を見上げたまま、答える。
次々に上がる様々な花火と共に、遅れてくる爆発音が、雨雲から轟く雷鳴に似ていて、ついあの嵐の夜を思い出してしまう。
『腹に直接、ズシッと、来るな』
『…花火の音は、平気なんだ?』
『は?』
『…進藤さん、怖いなら、手、握っててあげましょうか?』
あの時と同じセリフを、にっこり微笑みながら海成に向かって発してみると、予想通り、耳まで真っ赤にしながら、『お前…殺すぞ』と、凄まれる。
久々に聞いた、最大級の暴言に、怖いどころか思わず吹き出してしまい、ますます不機嫌になってしまう海成。
目の前では美しい仕掛け花火が夜空を彩っているというのに、片膝をたてて不貞腐れ、そっぽを向かれてしまう。