不器用な彼氏
『そろそろ折り返すか…あんまり遠くなると、戻るのもシンドくなるからな』
『疲れた?』
『別に…俺は大して疲れて無え』
『でも、朝からずっと運転してたし、疲れて当然よ。今日は、水族館行ったり、花火大会観たり、凄く充実した一日だったもんね』

今までのことを考えたら、充分すぎるほどの内容だった。
こんなに長く一緒にいることができて、このまま明日も一緒にいられるなんて、夢みたいだ。

『なんだ、今日がもう終わったみたいな言い方だな?』
『?もう、終わりでしょう?』

時刻はもう9時を半分も過ぎている。今から出かけるところなど、最初の計画には何もなかった。
ふいに海成の手が、私の額に触れ、手の甲でゆっくり頬を滑らす。

ドキッ…

『…俺にとってのメインは、これから…何だがな?』
『!』

触れられた頬を抑えて海成を見上げると、いつになく熱っぽい視線。
…あまりに楽しくて、すっかり忘れかけていた。

今夜はまだ、これから二人で一緒に過ごす時間は、たっぷりあるんだった。
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