不器用な彼氏
その長くゴツゴツした男っぽい手で、ゆっくりと順番に、私の髪や頬に触れ、その場所毎に、キスを落としていく。

髪、おでこ、瞼、鼻、頬…。
一つ一つが、あまりにも優しく、いつの間にか、強張っていた身体の緊張は、ほぐれていく。

言葉には出さないけれど、私に対する想いが流れ込んでくるようで、胸が熱くなった。

耳を澄ますと、遠くで聞こえる波の音。
高い天井の近くに並ぶ、広いガラス窓には、いくつもの無数の星屑が見える。

ふいに、目の前の海成が、無性に愛おしくなり、海成の背中に手を回し、ギュッと抱きしめる。

『…菜緒?どうした?』

自然と次いで出た言葉は、少し震えてしまう。

『好きだよ…海成』

初めて、口にした気がした。

こんなこと、この歳で声に出すなんて、思ってもみなかった。
この気持ち、ちゃんと伝わっているのだろうか?

抱きしめる手を緩め、ほんの少し身を起こす海成を、潤んだ瞳で見つめると、少し照れたように見つめ返し『煽るな、バカ』と、今度は直に唇に触れ、そのまま更に、深くなっていく。

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