不器用な彼氏
でも、なぜか、その先には一切触れて来ない。
その近くを、滑らすように触れ、肝心な場所には触れずに、また離れていく。

その行為を繰り返され、身体全体が熱を持ったように火照りだすと、逆に、何とも言えない、もどかしさすら感じてくる。

自分からその先を求めるなど、羞恥の極みで、どうにもじれったくなる。
それでも、続く執拗な快楽の先に、いつの間にか、もっと、ずっと深いところで、海成を感じたいと、願い始める。

『…か…海成……』

擦れた声で、海成の名を呼ぶ。

『…どうした?』

変わらずのポーカーフェイスで、私の耳元で囁かれ、再び息が上がり、

『くぅ…やッ』

耳元で話すのは、反則だ。

“やめて”と口にしたいのだけど、思考が集中できず、自分の口から時折出てしまう、甘い声がどうにも恥ずかしく、それを我慢するのに必死だった。

触れている手は、相変わらず、それ以上の場所へは侵入せずに、きわどさの境をゆっくり撫でるように滑らせる。

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