不器用な彼氏
二人にしかわからない過去がそこには見え隠れして、少し嫉妬してしまうけれど、理香子さんの幸せがここにあるように、私と海成がここにこうして一緒にいるのも、すべて繋がっているとしたら、過ぎ去った過去も、すべて受け入れるべきなのかもしれない、なんて大人ぶってみる。

理香子さんは、店先に、何人かのお客さんがやってきた様子に気づくと、『そろそろ店番戻らないと』と、つぶやき、私に視線を向け、意味ありげに微笑みかけてくれる。

『今日は、来てくれてありがとうね。また、海成といらっしゃい』
『ハイ』
『海成、渚にもよろしく』
『ああ』

そういうと、お客さんの一人に声をかけられ、そのまま接客に戻っていく。

『行くか』

海成に促され、理香子さんのお店を後にする。
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