不器用な彼氏
『恋愛映画だったら、絶対見ねぇからな』
映画を観に行こう、という話をした時、即座に言われたセリフ。奇遇にも、私も自慢じゃないが、恋愛映画は5分で寝れる自信がある。
幸い、私も彼も、SFやアクション系が好きだったので、今回は去年末に公開された、スターウォーズの最新作を観ることにした。
公開からかなりの日数が経っているからか、観客は少なく、ほとんど貸切に近い状態。薄暗い場内を、彼の後ろに着いてゆっくり進み、指定された席を探す。
席に着くと、ドリンクフォルダーに飲み物を入れ、脱いだ上着を膝の上に置き、本編が始まる前のインフォメーションに見入っていた。
と、自分達の座っている席の5列ほど前に座っているカップルが、何やら身を寄せ合って座っていると思ったら、ふいに男性の方が彼女にキスをした。
『あ!』
びっくりして思わず口元を抑える。
カイ君も気付いたようで、『アホッ』と、突っ込まれる。
二人ともまだ学生だろうか?周りなど気にしていない様子で、その後もイチャイチャと目のやり場に困る。
『なんだ…羨ましいのか?』
と小声でカイ君。
『まさか』
いくらなんでも、人目を気にせず、あんな風に出来るほど、若くはない。
『そうか…俺はちょっと羨ましいがな』
『え?』
聞き間違えたかと思い、彼を見上げると
『何だよ、意外か?』
『うん、ああいうの嫌いかと…』
『30男子を何だと思ってる』
『だって、距離間とか…すごく守るし』
『仕方ないだろう?俺たちのことは、誰にも知られるわけにはいかねぇんだから』
そうか。それは…そうだよね…。
『…ごめん。私とじゃなかったら…もっと普通だったよね?』
手元に視線を落とすと、ちょうど本編が始まる時間になり、照明が一段と暗くなる。
と、それと同時に右側に座る彼の左手が、私の肩を抱き寄せ、小さく『もたれてろ』というと、その左手で私の右手を包み込む。
カイ君の肩にもたれているので、自然と顔が近くなり、小声で話す彼の声がダイレクトに耳に響く。
『バカ、どんだけ我慢してるかって、話だ』
身体の右半分が、火照ったように熱くなる。そんな風に思ってくれていたなんて、考えてもみなかった。何か、すごく嬉しい。
どうせ映画が終わったら、またいつもみたいに、離れなきゃいけないのだろう。それならば…と、なけなしの勇気を振り絞って、彼の手に包まれた右手をゆっくり回転させ、手のひらを上に向け、彼の手のひらと合掌する。
少しびっくりしている彼を見上げて微笑み、“恋人繋ぎだよ”と口パクで教える。
暗闇でカイ君の顔色は見えなかったけど、間違いなく真っ赤になってる気がする。当然、この日の映画は終始集中して見れず、二人とも映画の内容の半分も理解できなかった…。
映画を観に行こう、という話をした時、即座に言われたセリフ。奇遇にも、私も自慢じゃないが、恋愛映画は5分で寝れる自信がある。
幸い、私も彼も、SFやアクション系が好きだったので、今回は去年末に公開された、スターウォーズの最新作を観ることにした。
公開からかなりの日数が経っているからか、観客は少なく、ほとんど貸切に近い状態。薄暗い場内を、彼の後ろに着いてゆっくり進み、指定された席を探す。
席に着くと、ドリンクフォルダーに飲み物を入れ、脱いだ上着を膝の上に置き、本編が始まる前のインフォメーションに見入っていた。
と、自分達の座っている席の5列ほど前に座っているカップルが、何やら身を寄せ合って座っていると思ったら、ふいに男性の方が彼女にキスをした。
『あ!』
びっくりして思わず口元を抑える。
カイ君も気付いたようで、『アホッ』と、突っ込まれる。
二人ともまだ学生だろうか?周りなど気にしていない様子で、その後もイチャイチャと目のやり場に困る。
『なんだ…羨ましいのか?』
と小声でカイ君。
『まさか』
いくらなんでも、人目を気にせず、あんな風に出来るほど、若くはない。
『そうか…俺はちょっと羨ましいがな』
『え?』
聞き間違えたかと思い、彼を見上げると
『何だよ、意外か?』
『うん、ああいうの嫌いかと…』
『30男子を何だと思ってる』
『だって、距離間とか…すごく守るし』
『仕方ないだろう?俺たちのことは、誰にも知られるわけにはいかねぇんだから』
そうか。それは…そうだよね…。
『…ごめん。私とじゃなかったら…もっと普通だったよね?』
手元に視線を落とすと、ちょうど本編が始まる時間になり、照明が一段と暗くなる。
と、それと同時に右側に座る彼の左手が、私の肩を抱き寄せ、小さく『もたれてろ』というと、その左手で私の右手を包み込む。
カイ君の肩にもたれているので、自然と顔が近くなり、小声で話す彼の声がダイレクトに耳に響く。
『バカ、どんだけ我慢してるかって、話だ』
身体の右半分が、火照ったように熱くなる。そんな風に思ってくれていたなんて、考えてもみなかった。何か、すごく嬉しい。
どうせ映画が終わったら、またいつもみたいに、離れなきゃいけないのだろう。それならば…と、なけなしの勇気を振り絞って、彼の手に包まれた右手をゆっくり回転させ、手のひらを上に向け、彼の手のひらと合掌する。
少しびっくりしている彼を見上げて微笑み、“恋人繋ぎだよ”と口パクで教える。
暗闇でカイ君の顔色は見えなかったけど、間違いなく真っ赤になってる気がする。当然、この日の映画は終始集中して見れず、二人とも映画の内容の半分も理解できなかった…。