不器用な彼氏
映画が終わって外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
冬のお台場の澄んだ空気に、潮の香りが含まれている。ライトアップした観覧車がすぐ目の前に飛び込み、『乗りたい!』と言ってみるも、『それより腹減った』と、言われる。
ガッカリしつつも、実は自分もちょうどお腹がすいていて、結局夕食を優先させる。30代カップルには“色気より食い気”ということか。
ふと、今日の本来の趣旨であるバックの中のチョコレートを思い出し、彼の後ろを歩きながら、渡すタイミングを模索すると、ちょうど左手奥に、お台場の海沿いに広がる、砂浜が目に入った。
“レインボーブリッジの前の砂浜で、チョコを渡す…なんてロマンチックなのかしら?”
思わずにんまりしていると、『何だよ、気持ち悪ぃな』とカイ君。彼に、100%乙女心はわからない。
『夕飯、イタ飯でいいよな』
『カイ君、それ死語らしいよ。今の若い女子には通じないんだって。3階の設計担当の子達が言ってたよ』
『くだらねぇ。お前に通じりゃ問題ねぇだろ』
さりげなく嬉しいこと言ってくれる。
午後8時過ぎ
最後にどうしても行きたいとわがままを言って、海沿いのおしゃれなカフェに入る。しかも、人気のテラス席を希望し、20分も待たされ、少々ご機嫌斜めな彼。
そんなカイ君を無視して、冷たい潮風に吹かれながら、ホットチョコレートを一口。
『このクソ寒ぃのに、なんで外?』
『愚問だよ、カイ君。この夜景を見て』
目の前に広がるお台場の夜景。レインボーブリッジが海に映って、水面が揺れるたびに、キラキラと揺らめく。
『興味ねぇ…ってか、女って、こういうのマジ好きだよな』
ドキッそれって…。
『…こういうとこ、女の子と来たことあるんだ?』
聞かなくてもいい質問をしてしまった。
『何だよ。お前だってあるだろ』
言われてみれば、私だって初めてじゃない。そりゃ30にもなれば、いろいろ経験してきて当たり前だ。
でも…やっぱりいくつになっても、あんまりいい気持ちはしないものなのね。私が黙っていると、なぜか突然噴き出す彼。
『何?』
『…いや、お前も女だなって思って』
『どういう意味よ』
『そういう意味だよ』
結局、笑う彼を見ていると、さっきの答えなど、もうどうでも良いように思えてくる。誰と来ても一緒じゃない。カイ君と今ここにいる現実が一番大切ということ。
冬のお台場の澄んだ空気に、潮の香りが含まれている。ライトアップした観覧車がすぐ目の前に飛び込み、『乗りたい!』と言ってみるも、『それより腹減った』と、言われる。
ガッカリしつつも、実は自分もちょうどお腹がすいていて、結局夕食を優先させる。30代カップルには“色気より食い気”ということか。
ふと、今日の本来の趣旨であるバックの中のチョコレートを思い出し、彼の後ろを歩きながら、渡すタイミングを模索すると、ちょうど左手奥に、お台場の海沿いに広がる、砂浜が目に入った。
“レインボーブリッジの前の砂浜で、チョコを渡す…なんてロマンチックなのかしら?”
思わずにんまりしていると、『何だよ、気持ち悪ぃな』とカイ君。彼に、100%乙女心はわからない。
『夕飯、イタ飯でいいよな』
『カイ君、それ死語らしいよ。今の若い女子には通じないんだって。3階の設計担当の子達が言ってたよ』
『くだらねぇ。お前に通じりゃ問題ねぇだろ』
さりげなく嬉しいこと言ってくれる。
午後8時過ぎ
最後にどうしても行きたいとわがままを言って、海沿いのおしゃれなカフェに入る。しかも、人気のテラス席を希望し、20分も待たされ、少々ご機嫌斜めな彼。
そんなカイ君を無視して、冷たい潮風に吹かれながら、ホットチョコレートを一口。
『このクソ寒ぃのに、なんで外?』
『愚問だよ、カイ君。この夜景を見て』
目の前に広がるお台場の夜景。レインボーブリッジが海に映って、水面が揺れるたびに、キラキラと揺らめく。
『興味ねぇ…ってか、女って、こういうのマジ好きだよな』
ドキッそれって…。
『…こういうとこ、女の子と来たことあるんだ?』
聞かなくてもいい質問をしてしまった。
『何だよ。お前だってあるだろ』
言われてみれば、私だって初めてじゃない。そりゃ30にもなれば、いろいろ経験してきて当たり前だ。
でも…やっぱりいくつになっても、あんまりいい気持ちはしないものなのね。私が黙っていると、なぜか突然噴き出す彼。
『何?』
『…いや、お前も女だなって思って』
『どういう意味よ』
『そういう意味だよ』
結局、笑う彼を見ていると、さっきの答えなど、もうどうでも良いように思えてくる。誰と来ても一緒じゃない。カイ君と今ここにいる現実が一番大切ということ。