プレミアムステイは寝不足がベスト

「私、ちゃんと自分で彼のこと思いっきりひっぱたいたよ?」

ふわふわの袖に涙を吸わせた彼女は、そう言って体を起こした。

もう3度目だからまぶたは腫れているし目も赤いけれど、泣いてから復活するまでの時間はだんだん早くなっている。

「なんだ、もう済んでたか。スッキリした?」

「全っ然! 殴り足りない」

力のこもった声を出した彼女には、笑顔が戻っている。

「あはは、足りないんだ」

またしばらくしたら彼のことを思い出して泣いてしまうかもしれないが、私はいつまでも彼女に付き合うつもりだ。

「あ、そういえば、この間話した会社の先輩なんだけど」

「明らかに主任に色目使ってるっていう先輩?」

「そうそう。その先輩、とうとう告白したみたい」

「どうなったの?」

「それがね……」

ふたりでいろんな話をしながら、私は改めて、彼女がさっき言ったことは正しいなと思った。

『せっかくいいホテルに来たのに大半を眠って過ごすなんて、もったいない』

大きな窓から都会の美しい夜景が楽しめる、ラグジュアリーなホテルのデラックスツインルーム。

ラウンジで美味しいお酒を飲んで、有名ブランドのアメニティを惜しげもなく使ってバスタイムを楽しみ、着心地最高の部屋着に身を包んでいる。

チェックアウトは13時。

大切な親友と来たからには、さっさと眠るより夜更かししておしゃべりが楽しいに決まっている。



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