夢がかなうまで
一年後、私は香港に居た。
はじめはエネルギッシュな香港の人々に圧倒されてばかりいた私も、いつしか彼らに慣れ、案外快適に暮らしていた。
油條(朝食用の揚げパン)を齧りながら家を出ると、国際郵便が届いていた。
封を開けると、中から写真が出てきた。
そこにはヒョウ柄のパーカーを羽織った日名子と、彼女に似た小学生の男の子が、なぜか中指を立てて映っていた。男の子はランドセルを背負っている。
「日名子」
唇からこぼれた私の小さな呟きは、あっというまに雑踏や車の音にかき消され、消えていった。
