雪の華
綿雪

「苦労より…幸せの方がデカイから…」


「いつか…別れたいと思う日が来るかもよ?」


「あるかもね…お互いに」


さらっと言った皇雅。


「だけど…そういうもんじゃない?」


「そういうもの?」


「結婚したってそう思う時だってあるだろうし…」


だから…離婚という言葉がある…


「でも…別れちゃったら…運命の人じゃないじゃん?」


「それを二人で超えて行けば運命じゃん…」


「超えるの?」


「そう…俺だって簡単にそれ、書いたわけじゃないし」


………簡単に書かれても困るけど………


「咲雪はどう思ってるかわかんないけどさ…結婚して、お互いに不満なんて絶対ある事じゃん。他人なんだし…でも…咲雪とだったら、どんな事も超えて行けると思ったからそれ…書いた…」


「私に飽きたら?」


「飽きるんだったら…とっくに飽きてるんじゃない?」


「じゃあ…おばあちゃんになったら?」


「俺も…じいちゃんだし、二人でのんびり過ごせばいい」


「もし、私が太ったら?」


「お腹まくらにして寝る…」


なんだろう…これ…楽しい。


「じゃあ…」


「まだ、ある?」


「私が…皇雅を嫌いって言ったら?」


「俺は、大好きって言う」


「皇雅が…他の誰かに目移りしそうになったら?」


「咲雪と別れていた時間を思い出す…」


「何それ?答えになってない…」


「それだけ…俺も辛かったから…好きなのに別れるのと、嫌いになって別れるのとは全然違うじゃん」


「じゃあ…私を嫌いになったら?」


「嫌いって言うから…好きって言って」


「意味わかんないよ…」


「嫌いになれたら…俺、ここにいないし…もっとラクだった…別れた時」


そんなに切ない顔しないで…

ただ聞きたかっただけ…不安だから…

また…離れるなんて嫌だから…


「私は腹立つほど…好き…皇雅の事」


「俺も…腹立つほど…咲雪が好きだから…」


「皇雅の事…抱きしめてもいい?」


「はい…」


そう言って…笑いながら手を広げた。


変わらない香水の香り。

大きな手。

あったかい胸。


私が背伸びをして顔を上にあげると首に唇が届く。


私はこれが好き…。


首に手を回して、耳元で…「キライ」そう言った。


皇雅は耳元で…「スキ」


「私もやっぱり好き…」


「じゃあ…俺はキライ」


「私は…スキ」


「俺も…やっぱスキ」


くすぐったいやりとり…


彼とだからできる事…。


他の人に絶対見せない私を彼はたくさん知ってる。



「こんな俺…柄にないし、恥ずかしくて誰にも見せられないわ…」


そう笑う。


「柄にないけど…私には毎日見せてね?」


「見せたくなくても…自然になっちゃうから…」


テレると視線を外して、ネックレスをさわる。


「私のクセってなんだろ…」


「咲雪のクセはテレると…唇噛むとこ」


「そう?」


「で下向きながら笑うとこ…」


知らなかった…。


言われた事ないし…聞いた事もないけど…。


「その顔、俺…好きだよ」


改まって言われるとテレる。


「ほら…」


本当だ…唇噛んでた…。


彼だけが知ってる私のクセ。


私だけが知ってる…彼のかわいいところ。


私はケータイからメールを送った。

目の前の彼に…


-私の運命の人ですか?-


フッと笑いながら返事をうつ彼。


-遠回りしたけど…運命の人です-


私は唇を噛みながら…


-もう…遠回りしないでね?-


-もう…遠回りは勘弁です-


-私もです…-


-あなたは…俺の運命の人ですか?-


-私をあなたの運命の人にしてくれますか?-


-あなたは俺の最愛の人です-


-私もあなたが最愛の人です-


お互いの顔を見ながらうつメールにドキドキする。


-どんな時も…一緒にいてくれますか?-


-どんな時も一緒にいてください-


-よろこんで…-



この時の気持ちを忘れないように…お互いのメールを保護した。


-よろこんで…-


そう言ってくれた彼に私はいっぱいわがままいって、いっぱい甘えようと決めた。



………1ヵ月後………

-着信…皇雅-

「はい‼用意できたよ…」

「ごめん…今日走るから会えない‼」

「えぇ‼」

「今から向かう…急に走る事になった…」

よくある事。

楽しみにしてたのに…。

「わかった…気を付けてね…」

「咲雪…大好きだよ?」

「私はキライ…」

「俺は愛してるよ…」

彼のペースに乗せられた私は…

「愛してる…」

「行ってくるわ」

「わかった…気を付けてね」

「はーい」


こんな感じ…。


オシャレしちゃったじゃん…

会えると思ったから。


私は部屋着に着替えた。

化粧も落とした。


お母さんに「またケンカ?」


「違います‼仕事だって‼」


「咲雪、面白いね?」


「何が?」


「顔に会いたかったのに‼って書いてる…」


「思ってるから‼正解‼」


お母さんともお父さんとも今はこんな感じ。


「今日、ご飯何?」

「咲雪いないと思ってたから…お父さんの好きなカレー」

「私も好きだけど…」

「すごく辛いヤツ」

「やったー‼」


いつもの会話。


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