副社長は甘くて強引
エレベーターから降りた副社長は、私の姿を認めると大股でこちらにやって来る。眉間にシワが寄ったその表情は、やはり不機嫌そうだ。
やっぱりクビなのかもしれない。
不安を抱きつつ副社長の様子をうかがった。
彼は通路途中でコートを脱ぎ始める。
えっ、なに?
突然の出来事に驚いたのも束の間、私のもとに副社長がたどり着いた。彼はスウェット姿の私の肩に、脱いだコートをふわりとかける。
「あ、あの……」
副社長は戸惑う私のことなど気にも留めずに手を伸ばしてくる。その彼の大きな手が私の額に触れる。自分の身になにが起きているのか理解できない。ただ彼の体温を感じた途端、頬が熱を帯びたことだけはわかった。
「心配した……」
私の額から手を離した副社長の頭が肩の上にズンとのる。同時に彼の口から安堵のため息がこぼれる。
コートを肩からかけてくれたのは、外の寒さから私を守るため? 額に手をあてたのは、私に熱があるのか確認するため?
そうだとしたら、すごくうれしい……。
「副社長……」
副社長への恋心が胸いっぱいに広がっていく。肩に彼の温もりを感じながらその広い背中にゆっくりと腕を回そうとした。そのとき……。