副社長は甘くて強引
「……最後に風呂には入ったのはいつ?」
「えっ?」
私の肩から顔を上げた副社長の思いがけない言葉を聞き、心臓がドキリと跳ね上がる。
「最後に風呂には入ったのはいつなのかな?」
「……おとといです」
「……」
私から足を一歩後退させた彼の冷ややかな視線が痛い。
「だって昨日はいろいろとあって……でも今は冬だし、汗かいてないし……」
副社長の耳には、私の必死の言い訳は聞こえないようだ。
「今すぐ風呂に入るんだな。そうすればそのひどい顔も少しはマシになるだろう」
「ひどい顔って……」
ひと晩中、泣き腫らした顔は、たしかに見苦しいのかもしれない。でもひどい顔っていうのは言いすぎじゃない?
ムッと頬を膨らませていると、副社長が玄関のドアノブに手を掛ける。
「あっ! ちょっと待ってください!」
「……」
彼は私の制止する声など気にも留めない。玄関のドアを開けて靴を脱ぐと、部屋にすばやく上がってしまう。
散らかり放題の部屋を見られてしまうなんて、なんたる失態!
ショックを受けつつも、副社長の後を追った。
彼は部屋の入口付近で呆然と立ちつくしている。目の前に広がった惨状に驚いているのだろう。