副社長は甘くて強引

「いつもはこんなに散らかっていないんですよ。エヘヘ……」

 不気味な笑い声をあげて言い訳をした自分が痛々しい。

 これからは、いつ、どんなときに、誰が来ても慌てないように、部屋を綺麗にしよう。

 決意を新たにする。

「さあ、早く風呂に入ったほうがいい」

「でも……」

 いくら副社長の命令でも、はい、そうですか。と、お風呂に入るのは気が引ける。それにまさかとは思うけれど、お風呂に入っている途中で副社長が乱入してくるなんてこと、ないよね……?

 疑いのまなざしを彼に向ける。

「それとも俺に服を脱がしてほしいのかな?」

「ま、まさか!」

 彼は体の前で腕組みをすると、クスッと小さく笑う。

「覗いたりしない。約束する」

「……はい」

 冗談を言ったかと思うと、すぐに安心できる言葉をかけてくれる。やはり副社長は意地悪で優しい人だ。

「ゆっくり温まること。いいね?」

「はい」

 上下スウェットに泣き腫らした顔、ボサボサの髪の毛のままじゃ恥ずかしい。彼の前では少しでもかわいい姿でいたい。

 そう思った私はクローゼットからボーダー柄のモヘアニットとデニムスカートを出すと、バスルームに向かった。

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