副社長は甘くて強引
副社長自らチーフに話をつけていたことに驚き、この先のことがますます不安になってくる。
「実はね……」
佐川に昨日の出来事を、おおまかに伝える。
『へえ、そんなことがあったんだ。災難だったね』
「うん」
私の気持ちに同調してくれる佐川の優しさがうれしい。
『大橋から連絡があったこと、チーフに伝えておくから』
「うん。よろしくね。それじゃあ、仕事がんばってね」
佐川に話を聞いてもらっただけで気持ちが軽く感じる。彼に感謝しながら通話を終わらせようとした。
『もしもし、大橋?』
私を呼び止める声が聞こえ、慌ててスマートフォンを耳にあて直す。
「なに?」
『もし副社長に変なことされそうになって困ったら、俺に連絡して』
「変なことって?」
『……ここでは言えないようなこと』
副社長と私があんなコトやこんなコトをしているいかがわしい姿が、脳裏に浮かび上がる。
いやいや、それは絶対にないから。だって私は彼のことが苦手だし、そもそもイケメンなうえにハートジュエリーの副社長という肩書を持つ彼が女に不自由しているはずがない。
「わかった。佐川、ありがとう」
『ああ』
今度こそ本当に通話を終わらせるとスマートフォンをテーブルの上に置いた。今の時刻は午前十時。副社長と約束した午後二時まで、まだ十分時間がある。
そうだ、二度寝しよう。
ベッドにダイブするとフカフカの布団にくるまり、瞳を閉じた。