副社長は甘くて強引
「アタシ、ノリっていうの。よろしくね」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
副社長の暴言にイラついたものの、ノリさんの明るい笑顔を見たら気持ちが落ち着いた。
「さ、どうぞ」
「はい」
この隠れ家的なお店の正体はサロン。こじんまりした店内は白で統一され、清潔感にあふれている。
ノリさんに促されてシャンプー台に腰を下ろすと、バレッタで束ねていた髪がほどかれる。
「それで、どれくらい切っていいのかしら?」
最後に美容院に行ったのは、たしか三ヶ月前。艶はなくなり、毛先は痛んでいる。それに私は陽斗にフラれた。失恋して髪の毛を切るベタな結末も悪くない。
「バッサリと切っちゃってください」
「あら、いいの?」
「はい」
今までロングヘアだったのは、陽斗の好みに合わせていたから。でもこれからは、いろんな髪型にチャレンジしよう。
素直にそう思えた。
「アタシ、思いきりのいい娘(こ)って好きよ。樋口ちゃんが驚くほど綺麗にしてあげるから安心してね」
「はい。よろしくお願いします」
シャンプー台が倒される。私の髪の毛に触れるノリさんの指の動きは繊細で気持ちいい。
骨太な外見とは大違い……。
ノリさんのテクニックにうっとりとしながら、ゆっくりと瞳を閉じた。