副社長は甘くて強引

 佐川が不思議がるのは当然だ。私だってたった一日で、気持ちが大きく変化するとは思ってもみなかったのだから……。

「ペリドットの指輪をはずすのは、元カレへの未練を断ち切れたときって決めていたの。でも私、優柔不断だからきっといつまで経っても指輪をはずすことができなかったと思う」

 私のもとに返ってきたペリドットの指輪は、引き出しの奥にしまった。あの指輪は一生、身に着けることはないだろう。それでも大事な宝物だということは変わらない。だから陽斗との思い出と一緒に、静かに封印したのだ。

「そっか。大橋が納得してるならそれでいいよ。しかしそのフォーエバーハートをポンとプレゼントするなんて、さすが副社長」

「そうだね」

 佐川とともに笑い合う。

 髪型を整え、メイクもきちんと施し、服装にも気を遣うと、背筋も自然に伸びて気持ちがいい。

 今日の私の姿を副社長が見たら、なんて言うかな? 昨日みたいに『野暮ったい』とは、もう言わないよね。

 朝からご機嫌な私は、足取りも軽く会社に向かった。

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