副社長は甘くて強引

「大橋!」

 一日の業務を終えてショップを後にすると、またも佐川に声をかけられる。

「なに?」

「大橋はこれから家に帰って寝るだけなんだよね?」

「そうだけど……」

 これって昼間の話の続き?

 私の今日の予定を必要以上に気にかける佐川に戸惑っていると、彼が唐突なことを言いした。

「それなら、俺と一緒に食事に行かない?」

 もしかして佐川はひとりでクリスマスイブを過ごす私のことを、気にかけてくれているの?

 彼の気遣いはとてもうれしい。でもクリスマスイブのレストランはきっと恋人たちであふれている。

 あちらこちらで愛をささやき合うカップルに混じって、同期の佐川と食事をするなんて気が進まない。それに、もしかしたら副社長からメールがあるかもしれないし……。

「佐川、ゴメン。今日はまっすぐ帰る」

「……そうか。わかった。それじゃあ、お疲れ」

 佐川の声が普段よりも小さいのは、食事に行くのを断ったせい?

「うん。お疲れさま」

 彼の好意を台なしにしてしまったことを申し訳なく思いながら、佐川と別れた。

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