副社長は甘くて強引

「はい、はい」

 ドアホンの呼び出し音に返事をしながら玄関に向かうとドアを開ける。

「樋口直哉様からです。サインお願いします」

 副社長から私に?

「あ、はい」

 予想外だった送り主に驚きつつ送り状に印鑑を押す。

「ありがとうございました」

「ご苦労様です」

 宅配のお兄さんに声をかけると玄関ドアがパタンと閉まった。届いたのは白い箱。送り状の品名には〝生花〟と記入されている。

 どうして副社長が私に花を?

 訳がわからないまま箱をリビングに運ぶ。不意打ちのお届けものを前にして気分が上がる。胸がドキドキと音を立てる中、丁寧に梱包をほどくと蓋を開けた。

「わぁ、綺麗……」

 箱の中に入っていたのはメッセージカードと赤いバラがメインのアレンジメント。まずはカードを開く。

 ブルーのカードに書かれていたのは【メリークリスマス】という文字と、彼の名前。短くても彼の手書きのメッセージはうれしい。

 食べかけだったおでんと肉まんとショートケーキをキッチンに運ぶと、箱から取り出したアレンジメントをテーブルの上に飾った。殺風景だった部屋が一気に華やぐ。

 クリスマスイブの夜にこんなに素敵なプレゼントを贈ってくれるなんて、副社長はサンタみたいだ。

 スマートフォンを手にすると、副社長にお礼のメールを送った。

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