副社長は甘くて強引

 忙しかったクリスマス勤務をなんとか乗り越え、迎えた仕事納めの今日。明日から連休ということもあり、スタッフも地に足がついていないような感じだ。

「お先に失礼します。よいお年を」

 年末の挨拶を済ませるとバッグヤードに下がる。すると背後から声をかけられた。

「大橋、お疲れ」

「あ、佐川。お疲れさま」

 私も佐川も今日は遅番。クリスマスシーズンが終わり、定時で上がれることがうれしい。

「大橋さ、今日これから予定とかある?」

「ううん。なにもないよ」

「それなら明日から休みだし、これから飲みに行かない?」

「うん。いいよ」

 突然の誘いだったにもかかわらずYESと即答したのは、前々から様子がおかしい佐川が気になったから。

 悩みがあるなら力になりたい。

「じゃあ、通用口で待ってる」

「わかった」

 いったん佐川と別れるとロッカールームに向かう。まず初めにすることはメールのチェックだ。佐川を待たせているとわかっていても、これだけは譲れない。

 はやる気持ちを押さえつつ、バッグからスマートフォンを取り出す。でも副社長からのメールは届いていなかった。

 クリスマスイブにバラをプレゼントしてもらったお礼のメールに対して、副社長から返ってきたのは【どういたしまして】という短い言葉。それきり彼とはメールのやり取りをしていない。副社長がタイに出発してから、もう三週間が経つ。

 いったい、いつ帰国するんだろう。会いたいな……。

 不意に込み上げてきた思いを、慌てて振り払う。

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