副社長は甘くて強引
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」
ほの暗い店内を進むと、窓際のカウンター席に腰を下ろす。オレンジ色の照明、壁にズラリと並んだボトル、黒いベスト姿のバーテンダー。佐川の言う通り、たしかに雰囲気がいい。
「大橋、なに飲む?」
「そうだな……」
メニュー表に書かれたカクテルの名を見ても、どのような味がするのかよくわからない。
「甘いヤツがいい? それとも爽やかな感じ?」
悩んでいる私に、佐川が助け舟を出してくれる。
「甘いのがいい」
「了解」
佐川は店員さんを呼ぶと、手早くオーダーを済ませてくれる。佐川と食事をするのは今日で二度目。前回のしゃぶしゃぶ屋と同様、佐川はとても頼りがいがあると思った。オーダーを済ませた佐川の顔に笑みが浮かぶ。
「大橋、最下位脱出できてよかったな」
「うん。ありがとう。佐川は相変わらず絶好調だね」
「まあね」
ハートジュエリーではお客様の商品を会計する際、販売スタッフのナンバーを読み込ませるシステムになっている。だから、その月の月末にどのスタッフがなんの商品をいくつ売ったのか、瞬時に結果が出る。
今日は十二月最終営業日。販売成績トップの佐川とは売り上げ額に大きな差があったものの、私は最下位を脱出することができた。鈴木チーフからも労いの声をかけてもらい、気分は上々だ。
「お待たせいたしました。カルーア・ミルクでございます」
佐川がオーダーしてくれたカクテルが目の前に置かれる。琥珀色の液体の上に白いミルクが浮いている様子は、一見すると二層になったアイスコーヒーにも見える。
「マティーニでございます」
次に佐川がオーダーしたカクテルがテーブルの上に置かれる。