副社長は甘くて強引
黙り込む私に痺れを切らした佐川が箱を手に取る。そして無造作にラッピングをほどいていく。彼がジュエリーケースの蓋を開けると、ルビーのネックレスが間接照明の光を受けてキラリと輝く。
「副社長の指輪のルビーと比べられると小さくて恥ずかしいけど、今の俺にはそれが精いっぱいだから仕方ないな」
佐川はそう言うと、ジュエリーケースからネックレスを取り出す。そしてイスから立ち上がると私の背後に回った。
「あっ、佐川っ!」
声をあげてしまったのは、首もとにネックレスをあてられたから。抵抗する間もなくフックを留められてしまう。
「うん。似合ってる」
「……」
今日の私の服装は、ルビーのネックレスが綺麗に映える白いVネックのセーター。私の首もとを覗き込んだ佐川の顔に、クシャリとした笑みが浮かぶ。
「鏡持ってる?」
目尻が下がった佐川の笑みは、ショップで見せる営業スマイルとは違う。お世辞とは違う笑顔を見せられたら悪い気はしないし、正直なところルビーのネックレスも気になる。
「……うん」
ポーチの中にはコンパクトミラーが入っている。バッグを膝の上にのせてポーチを探す。するとタイミングよくスマートフォンが音を立てた。着信相手はまさかの副社長だ。
「佐川、ちょっとゴメン」
「ああ」
副社長との会話を佐川には聞かれたくない。
バッグからスマートフォンを取り出すとイスから立ち上がる。そして小走りに店の外へ出た。
お願いだから切らないで……。
まだ鳴り響くスマートフォンを握りしめながらドアを閉めると、焦りながら通話ボタンを押す。