副社長は甘くて強引
目に留まったのは、テーブルの上に置かれたジュエリーケース。副社長のことが好きだと気づいた今、佐川の思いがこもったネックレスをもらうわけにはいかない。
「佐川。ゴメンね。やっぱりこれ、受け取れない」
首もとを飾るルビーのネックレスのフックに手をかける。でもその動きを佐川に止められる。
「だからそれは大橋へのクリスマスプレゼントだから。返されても困るよ」
イスから立ち上がった佐川はジュエリーケースを私のバッグにねじり込む。
「あっ」
「そろそろ帰ろうか」
佐川は私の返事を聞かないまま、手際よく会計を済ませてしまった。
「お金……」
コートを羽織り、バッグからお財布を出そうとした私を佐川が制する。
「いいから」
「でもっ!」
食い下がる私を見た佐川がクスッと笑う。
「じゃあ今度は大橋がおごってよ」
「……」
今度と言われても困る。副社長への気持ちを自覚した私はこの先、佐川とふたりきりで飲みに行くつもりはないのだから……。
黙り込む私を見た佐川がバーのドアを開ける。
「もう遅いから、大橋の家まで送るよ」
「大丈夫。ひとりで帰れるから」
佐川から気持ちをハッキリと伝えられるのが怖い……。
彼の申し出を断る。
「……そうか」
「うん。ありがとう」
バーを出ると階段を下りる。
「佐川、私、コンビニに寄って帰るからここで」
気まずい思いはしたくない。だから私は、苦しい言い訳を口にする。