副社長は甘くて強引
「おかえりなさい」
「ただいま」
副社長の声がくぐもって聞こえるのは、彼の逞しい胸の中にすっぽりと収まっているから。
「会いたかった……」
メールでは伝えることができなかった本音をポロリと漏らすと、私の背中に回った彼の腕に力がこもる。
「かわいいこと言って俺を煽(あお)るなよ」
「煽る?」
彼の言っている意味がわからない。首を傾げつつ顔を上げると、ふたりの視線がぶつかる。その距離はお互いの唇が触れてしまいそうなほど近い。
「す、すみません!」
自ら彼の胸に飛び込むなんて、信じられない。
自分の大胆な行動を恥ずかしく思いながら、副社長から離れるために足を一歩後退させる。しかし私を抱きしめている彼の腕がそれを許さない。
「自分から抱きついてきたくせに、簡単に逃げられると思うなよ」
彼は私の顎に指を添えると、その端正な顔を近づけてくる。
これは、もしかして……。
キスの予感に目を伏せると、瞬く間に唇を塞がれる。
コーヒーショップからほんの少し離れた暗がりでキスを交わす私たちを邪魔するように、北風がヒュッと吹きつける。でも寒さなんか感じない。今、私が感じているのは、彼の唇の温もりだけ……。
「今すぐ京香を俺のものにしたい」
唇を離した口からこぼれ落ちた彼の言葉に驚いたのは、ほんの一瞬だけ。
「して……ください」
彼と同じ気持ちを抱いた私は小さな声で自分の思いを打ち明けた。