夢のひと時
考えてみたら納得できる。なぜ私があれほどまでに三上猛の小説に惹かれたのか。あれだけ好みが合う人が書いたのだから惹かれるのは当然だ。

「三上猛先生、なんですよね」
「知ってたんだ、光栄だな」
「全作品、読んでます」

知っているどころか大ファンです、とはさすがに本人には言えない。

「それは嬉しい。だって作家になったの高原さんのおかげだし」

私の? さっきから一体どういうこと?

先輩の言葉に混乱していると、奈美が「あの」と控えめに声をかけた。

「せっかくの再会だし二人でゆっくりしたら? 私はここで失礼するから、ね?」

奈美が目配せするので、そんなの先輩に迷惑だと目で訴えながら彼女の袖を掴む。すると隣から声が聞こえた。

「すみません。でもお気遣い嬉しいです。高原さんとはゆっくり話したかったので」

待って待って待って、先輩ってこんな人だっけ? やっぱり昔と違う。

「それでは失礼します。雛、また連絡してね」

私の混乱を無視して、そしてきちんと報告しなさいと釘を刺してから奈美はこの場を去っていく。
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