御曹司と愛されふたり暮らし
「んじゃ、カンパーイ」

ハルくんにそう言われ、私と彼は、お互いのグラスをカチンと合わせた。

私はジュースを、ハルくんはビールをそれぞれ口に含み、さっき再会した時よりずっとリラックスした状態で再び会話を始める。


「合コンに来てたってことは、花菜は彼氏いないんだ?」

「うん。と言っても、私も合コンだなんて知らなかったんだけど……」

「あはは。そうかもと思った」

「ハルくんは? 彼女はいないの? ていうか実は結婚してたりする?」

「え? してないしてない。彼女もいないよ。今は仕事が忙しいからな」

そうなんだ。こんなにカッコいいのにもったいない。女の人たちはハルくんのこと常に放っておかないだろうけど。



「仕事は? 普通の会社員、だっけ? もっと詳しく教えてよ」

「あ、えと。文房具会社で事務職やってる。生産管理とか、受注グラフの作成とか」

「へぇ~。実家から通ってるの?」

「あ、ううん。実家からだと少し遠くて。アパート借りてひとり暮らししてるんだ。
ハルくんはお仕事は? あ、確かハルくんのお父さんって……」

言葉の途中で、ハルくんが「うん」と答える。

ハルくんのお父さんは、有名な証券会社の社長さんだったはずだ。
ハルくんもお父さんの会社で働いてるのかと聞いたら、彼は「そうなんだ」と答えた。


ハルくんってば、このルックスに加えて大手会社の社長の息子さん……つまり御曹司だとは。ますます女性が放っておかないだろう。

でも、カッコよさとか御曹司だとかはハルくんの魅力には関係ないと思う。

やさしいところ。気遣いしてくれるところ。笑顔が素敵なところ。ハルくんの魅力は、きっとそういうところ。
< 10 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop