御曹司と愛されふたり暮らし
「え?」

「私、ハルくんとのデートの約束を破って、ほかの男の人と会ってたんだよ? しかも、匂いでわかるでしょ? お酒も飲んでたんだよ? さっきも私の不注意であんなことになってしまって……なんで、なんで怒らないの?」

私がそう言うと、彼は少し困ったような表情をして。


「花菜が悪意でウソをついたわけじゃないっていうのがわかるからだよ。デートの約束も、楽しみにしてくれてたのじゅうぶんわかってるし。
予想だけど、職場の先輩に騙されて合コンつれて行かれて仕方なく……とかじゃないのか?」

まるでエスパーのような彼に驚きつつも、その通りなので「うん……」と頷いた。


「ホラな。じゃあ怒るとかじゃねーだろ」

「それでも……っ」


それでも。



「怒って、ほしい……」



怒られたら、安心できる気がする。
でも、このままなにも言われないと、不安になる。


だって……



「ごめんね、私、ハルくんが助けてくれて本当にうれしかった。うれしかったのに、こんなこと言うなんて最低なんだけど……。
なにやってるんだよ、って。フザけんなよ、って。怒ってほしい。
なにも言われなきゃ、ただの元クラスメイトと変わらない……。
ハルくんの気持ちが、わからないから……」


一度引っこんだはずの涙が、またあふれてくる。私、本当にめんどくさい女だと思う。自分でも、自分って恋をするとこんなにめんどくさいんだって思った。

それでも……。


「怒ってよ……」

ハルくんの気持ちが、知りたくて。
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