御曹司と愛されふたり暮らし
「償いなんて、そんな……」

「ダメ。そうしないと俺の気が済まないから。言うこと聞いて」

鋭い視線を向けられながらそう言われれば、思わず怯んで言葉につまってしまう。
美形な人がそんな顔すると、凄みが増す気がする。


本当に、償いなんて望んでない。

でも、それでハルくんの気が済むなら……。ハルくんがスッキリするなら……。


「……じゃあ、今度ご飯でも、行く?」

そう伝えると、ハルくんは「飯か。そうだな」と答える。

あ、なんか私、思わずデートに誘ったみたいになっちゃった?
違う、違うの。そういうんじゃないの。決して下心があってご飯に誘ったわけではなく……!って、誰に言いわけしてるの、私。


「じゃあ、連絡先教えてくれる?」

ハルくんはそう言って携帯を取り出す。
私も、「うん」と答えて携帯をハンドバッグの中から出した。

連絡先を交換する。
ハルくんの連絡先が、私の携帯の画面に表示される。
なんだろう、なんだかくすぐったいけど、すごくうれしい。


「じゃあ、食事についてはまた連絡する」

「う、うんっ」

「花菜、家どこ? 遅いから近くまで送ってく」

「え? ……うん、じゃあお願いします」


街灯はあるけれど薄暗い夜道を、駅に向かってふたりで歩いていく。


……なんだか私、ドキドキしてる。なんで?


初恋なんて、とっくに思い出に変わったはず。
今さらこんなふうにドキドキするの、おかしいよ。


でも、だって。



ハルくん、あのころと変わらず、すごくやさしいから。

だからドキドキしても仕方ないよね、なんて、またしてもひとり心の中で言いわけをしながら、家の前まで送ってもらい、お別れした。


次に会う日程は決まっていないけど。
次もまた会う約束はしたから。


早く、また会えないかな。

……会いたいな。
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