御曹司と愛されふたり暮らし

翌日。

今日は土曜日なので仕事はお休みだ。
ハルくんも、さすがに出張から帰ってきた翌日に休日出勤なんてものはなく、今日は一日お休みだ。

それなのに。せっかくふたり揃って休日なのに、私たちは朝からろくに目も合わさない。

彼の分の朝食は作った。まだ出張の疲れもとれていないだろうし、私は彼の彼女でもあるけど、居候という立場でもあるわけだし。
彼も、私の作った朝食はきちんと食べてくれた。ケンカしていても、「いただきます」と「ごちそうさま」をしっかり言うあたりは、真面目だと思う。


ケンカしているのなら、私も彼も、それぞれの部屋に引きこもればいいだけの話だ。そうすれば、口をきく必要もないし、顔を合わせることもない。
それなのに、さっきからお互いにリビングで、本を読んだり紅茶を飲んだり、同じ空間で過ごしている。
口はきかない。
でも、私は彼に向けて何度かチラチラと視線を送っていたりはする。
私が紅茶を飲んでいる間に、彼からの視線を何度か感じたりもした。
多分お互いに、もう一度ちゃんと話をしたいと思っているのだ。でも、話し出すタイミングやキッカケがわからない。本当に、子どものケンカのようだ。


だけど、私は勇気を出して声を出した。

「あの……」
「あの……」

あ。どうしよう。ハルくんと声をだすタイミングが被ってしまった。気まずい空気が流れる。


「……なに? ハルくん」

「花菜こそ」

「先言っていいよ」

「そっちが先言っていいよ」

「……なんでもない」

「じゃあ俺もなんでもない」


……なにやってるんだ私は。というか、ハルくんもなんなんだ。言いたいことがあるならハッキリ言えばいいじゃん! 男らしくないな!

と、私が自分のことを棚に上げてハルくんのことを心の中で非難したその時だった。


――ピンポーン。

インターホンが鳴って、私とハルくんは同タイミングで玄関のモニターの方へ視線を向ける。

先にイスから立ち上がったのはハルくんだった。

ハルくんはモニター越しに誰かと会話を始める。

その会話中、ハルくんの声がだんだんと不機嫌になっていった。

そして、会話に耳を傾けていると、来訪者がこれからこの部屋に来ることがわかった。

誰が来るんだろう? 四葉さん? 唯くん?
すると数分後、やって来たのは――……。
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