御曹司と愛されふたり暮らし
だから私は必死で考える。
彼の気持ちをしっかりと受け取ったうえで、なるべく彼のことを傷つけずに、この提案をお断りする方法を。

そう、お断りする。結論としてはそれしかない!彼がやさしいからこそ、なるべくやんわりお断りするのだ!


「えと。
そ、そう。今住んでるアパートの更新、まだだし。いきなり引っ越すなんて……」

うん。これが一番まともで、一番仕方ない理由だよね。決してウソじゃなくて事実だし。

だけど。


「ああ、それも俺が大家さんと話しといたから。大丈夫」

「えええ!?」

いつの間に!?
ていうか、私の部屋の契約の話なのに、私が不在の状態で話が進んでいくの!?
普通はありえない……。
でも、ハルくんはかなり強引な性格みたいだし、あの大家さんはご高齢なうえにかなり天然なお人だ。やさしいおじいちゃんだけれど。あまり深いことは考えずに、ハルくんにすべてお任せしてしまったかもしれない。


ってことは、私、もしかしてもうあのアパートには帰れないってこと? もうアパートの契約は解除されてしまっているってこと? そんな!?

だからって、ハルくんと同居なんて――!?


私があたふたと、そしてしどろもどろになっていると、私が困っていることがハルくんにも伝わったのだろう。
ハルくんは、怒るわけでもなく、さらに強引に話を進めるわけでもなく――普段のやさしい表情と声色で、こう言った。

「じゃあさ、お試しで一ヶ月。いや、もしどうしても嫌だったら一週間でもいい。どう?」

「お試し?」
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