御曹司と愛されふたり暮らし
「そ、そうなの? いいよ、取りに行くから。どこに持って行ったの?」

「そ、それが! ちょうど業者さんが来たので、手渡ししてしまって……!」

もうトラックに積んで持っていってしまったと思います、と瑞樹ちゃんは言った。

ウ、ウソでしょ……⁉︎ 廃棄行きってこと⁉︎


私が動揺していると、瑞樹ちゃんはさらに青い顔で私に尋ねてくる。

「戸山さんすみません。も、もしかして、顧客情報とか書いてありました⁉︎ そうだとしたら流出……⁉︎」

「あっ、いやいや! あれはプライベート用のスケジュール帳で、仕事関係の内容は一切書いてないよ! 知り合いのアドレスとかも書いてないし、それどころか新年始まったばかりでまだほとんどなにも書いてないから!」

今にも泣き出しそうな顔をしている瑞樹ちゃんを安心させようと、私は早口でそう説明する。
でも、説明したことは事実だし、それに、そもそもはあんなところにスケジュール帳を置きっぱなしにしてしまっていた私が悪いんだ。瑞樹ちゃんだけが悪いわけじゃない。

だから私は、「驚いてちょっと動揺しちゃっただけ! 新しいの買えば済む話だから、全然気にしないで!」と伝えて、この話は終わりにした。


……実際、個人情報の類はなにひとつ書いていないし、スケジュール帳がなくなっても困ることはない。

だけど。

ポストカードもなくなっちゃった……。思い出のポストカード。それに、せっかくお揃いだったのに……。
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