御曹司と愛されふたり暮らし
「ハル、く……?」

心臓がまた、バクバクうるさい。息が苦しい。

でも、嫌じゃないのはなんで?


ていうか私、男性にこんなふうに抱きしめられたこと今までないから、一体なにが起こっているのか、なんでこんなことになっているのか、まったくわからない……!


彼が私を抱きしめる腕の力が、ふと少し弱まった。
彼が私から少しだけ身体を離し、正面から私を見つめる。
……私も、彼を見つめ返した。


すると。



ス……と、彼の右手が今度は本当に私の頬に触れて。



「……っ⁉︎」

勘違いじゃなくて、本当の、本当に、彼の唇が私の唇に近づいてきたーー……。





嫌なら拒むことのできるくらいに、ゆっくりと距離を縮められる。


だけど、私の身体は動かなかった。

驚いて硬直してるんじゃなくて。

彼を、受け入れようとしたからだと思うーー……。





けれど、唇が触れ合う前に、私たちの間に電子音が流れる。

ハルくんの携帯に電話がかかってきたようだった。


「……仕事の電話かも。ちょっと出る」

そう言って、彼は私から離れて上着のポケットから携帯を取り出した。


……通話始めちゃったし、私は先にリビングに戻ろう。そう思って私は彼に背を向ける。


……それにしても、今のなんだったんだろう。
つい、受け入れそうになってしまったけど。いや、電話がかかってこなかったら確実にーー……。

受け入れ態勢だった私が言える立場でもないけど、ハルくんって、真面目そうだけど案外遊んでるというか、手出すの早いのかな……。
これだけカッコいいんだもん、経験は豊富だろうし、そうだとしてもおかしくはないよね。

そんなことを考えながら、チラリ、と。一度彼に振り向く。彼は私に背を向けて電話をしている。

でも……。


(え……?)

外は薄暗いけれど。リビングの電気に照らされて、ほんのり見える。彼の耳が、赤く染まっているのが。
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