御曹司と愛されふたり暮らし
仕方ないので部屋の中に戻ろうと彼に背を向けるけれど。


「あ、ちょっと待って」

「え?」

急に呼び止められ、私は彼に振り向く。


すると、彼は真剣な表情で私の頬に右手を伸ばしてきたーー……。


バックン、と心臓が跳ねる。


な、なに⁉︎ まさか、キーー……



思わず反射的に、私は身体を硬直させ、動けずにいた。


すると彼の右手が、私の頬ーーにかかっている髪の毛に触れて。



「ゴミついてた」


と言った……。


ゴ、ゴミですか。ビ、ビックリした。だって、ほんとに……


「キスされるとか思った?」

「!」


なんてな、とハルくんは言うけれど。

私は、これ以上ないってくらいに心臓が飛び跳ねてしまった。

だって、本当に、キスされると思ってしまったからーー……。
そんなわけ、ないのに。


そう思ってたら、顔が熱くなって、身体が動かなくなった。



「花菜?」

ハルくんの呼びかけにも、返事をすることができない。


なんとかがんばって顔を上げて、彼を見つめた。
それだけで精いっぱいだった。
自分がどんな顔をしているのかも、わからなかった。


だから、




「……なんでそんな顔する?」

そう尋ねられても、「え……?」と返すことしかできなかった。


すると突然。




ーーギュ……。




「え……?」



私はなぜか、ハルくんに正面からやさしく抱きしめられてしまったーー……。
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