校庭に置いてきたポニーテールの頃
大嶋の胸の中で、私はぼんやりと得体のしれない違和感を感じていた。

抱きしめられたことは嫌ではなかったと思う。実際にあの時も抵抗はしなかった。

だからといって、大嶋の背中に自らの腕を回すこともしなかった。


お酒が入っていた割には、ずいぶん冷静になっていたと思う。

大嶋が私の頭を撫でていたこと、反対側の手の平が私の肩を強く抱いていたこと、どれもきちんと覚えていた。


あまり時間は経っていなかったと思う。大嶋が一言「悪い」って言ってから、そっと私の身体を離す。


私も大嶋も、もういい大人だ。その後も特に気まずくなることはない。お互いになかったことのようにして、カラオケを再開した。

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