幕末を駆けた桜



きっと彼は全部悟った上で許可を出したと思うからね…と笑った山南さんに、僕も薄く笑みを浮かべて頷いた。


確かに……な。
土方の事だし、色々考えてるはずではあるんだろうけど。


調子乗るのが気に食わないから、本人には絶対に言わないけどな。



『では、芹沢さん。山南さんをよろしくお願いします。

……山南さん、すぐに呼びに来ますので、安心して、鴨さん達と話してくださいね』



そろそろ行かないと、土方に後で説教されるはず。

そう思って、鴨さんに一度お辞儀をしてから立ち上がり山南さんを見て口角を上げた。


『……うん。ありがとう、真白』



立ち去る寸前に見た山南さんの笑みは、今まで見た中で一番優しく、一番美しかった。


……自分の判断が正しいかなんて事は良く分からないけど、山南さんのあの笑みが見れたから良しとする。


八木邸を出てもう一度頭を下げ、山南さんが脱走するのを防げた事に安堵しながら早足で前川邸へと戻った。



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