キンダーガーテン ~温かい居場所に~
メールをすると、直ぐに返事が返ってきた。
"Ok!やったぁ‼美味しいものを期待してるよ。"
"この間出来たイタリアンのお店に行きたいって伝えてね。お腹を空かせておく"って。
"お昼のランチよりもディナーが良いかも。"って…皆好き勝手言ってる。
ちょうど休憩のためにサービスエリアに止まったから、先生にメールを見せてあげたら
「うわぁっ!これはかなりの出費になりそう…。まぁ唯ちゃんのお友達は
大切にしないとねっ。」って笑ってた。
先生…ホントに奢るつもりなのかなぁ~?
唯も出した方が良い?
どうしたら良いのか悩んでたら
「彼女に払ってもらうくらいなら、初めから誘いません。」って鼻をギュッっと。
痛いなぁ~って擦りながら上目使いで見たら
「オレってそんなに情けない?」って笑ってた。
あっ!
これが、この間彩ちゃん達が言ってた"男のプライド"?
う~ん。難しいなぁ。
結局…甘えた方が良いのかなぁ?って思って
「お願いします。」って。
先生に促されて車から降りると、尋ちゃんと和也さんが手を繋いで近づいてきた。
「ねぇ~お姉ちゃん。少し早いけどお昼にしよう。早めに食べてお腹の消化を早くしたいんだ。」
??……消化を早く?
訳の分からない会話に疑問を持ちながらも、先生もお腹を空かせてるみたいだから
「うん」って賛成した。
…しっかし…
付き合って二年ともなると、二人でいるのが自然なんだなぁ~。
手だって…恋人繋ぎしてるもん。
チラッと先生を見たら目が合って…「何?」って目で聞かれた。
手を繋いだ二人を見ると
"あぁ~"って納得したみたいで…"する?"って目で聞かれた。
"無理だよぅ"って首を横に振ったら、笑って隣を歩いてくれた。
平日のサービスエリアは、それ程人が多くないみたい。
定年を迎えた夫婦や、春休みだからかカップルや女の子同士のグループが少しいる。
二人で並んで歩いていたら
"ねぇ~あの人‼"
"わぁ⁉かっこいい。"
"隣の女って…彼女かなぁ"って、女の子三人組の会話が耳に入った。
こっちをチラチラ見るから…きっと先生の噂をしてるんだよね?
先生って、かっこいいからなぁ~。
モテるんだよね…。
唯って…子供っぽいから…どう見られてるんだろう??
妹⁉
同じ10歳差でも…尋ちゃん達は、ちゃんと恋人に見れるのに…。
唯ももっといっぱい先生と居たら、そんな風に見られるようになるのかなぁ?
なんだか隣を歩く先生が、急に遠くに感じて淋しくなった。
やっぱり…手を繋いだら良かったのかなぁ?
そうしたら、彼女に見えたかな??
女の子達の視線が気になって、ホンの少しブルーになってしまった。
先生達に席を頼んで、尋ちゃんと二人でお手洗いに行くと
「ねぇ~お姉ちゃん‼これから何処に行くか聞いた?」って
「ううん。
出発の時に聞いたけど、あやふやになってまだ聞いてない。」
「なんだぁ。それで元気がないのかと思ったのにぃ。違ったんだ~。
だったら、着いてのお楽しみ!」
ニッコリ鏡越しに笑って、サッサとお化粧をなおしに取りかかった。
先生達のところに戻って、軽めの昼食を取るとまた出発。
「あのね、先生。
さっき尋ちゃんに"行き先を聞いたから元気がないのか?"って聞かれたんだけど…
何処に行くの??…まさか‼唯の怖がるところ??」
「怖がるって?」
「遊園地とか……。」
「違うよ、日帰り温泉だよ。」
「な~んだぁ!お風呂なんだ。良かったぁ。」
「あれっ⁉お風呂が好きなの?」
「好きって言うか…
温泉って、蛇も絶叫マシンも暗いところもないから怖くないかな?って…
遊園地や映画は、怖いからダメなんです。
でも…尋ちゃんは、面白がって直ぐに連れて行きたがるから…。」
「唯ちゃんが嫌がってないなら良かった。
"着くまで内緒にして下さい"って、尋ちゃんにお願いされて困ってたんだぁ。
それより…元気がなかったのはどうして?まさか、オレの運転で酔った?」
「えっ⁉それはないです。
先生はいつも安全運転で上手だから、みんな"心地良い"って言ってます。」
「だったら?」
「あっ…あの…えっと…。…………なんとなく…………??」
「なんとなくでブルーにはならないよ!
なぁ~に?? 言ってごらん。
オレが答えるまでしつこく聞くのなんて、経験済みでしょ?」
「うん。…あのねっ。あの…」
さっき先生のことを見てた女の子のことや
モテる先生が、少し遠くに感じて淋しかったことを話した。
「それならオレと同じだよ。オレもしょっちゅう思ってる。
佐藤先生の時だって、唯ちゃんに色々聞くのが嫌だったし、保護者だって分かってても
お父さん達に、ニコニコ笑って挨拶するのを見るとイライラするし。
今だって、唯ちゃんが嫌がったから手は繋がなかったけど…
チラチラ見てた男たちには"オレの彼女"って分かるように、なるべく近くを
歩いていたから。」
えっ⁉先生でもそんなことを考えるの?
驚いた顔で見ていたら……
「男だってヤキモチくらい妬くよ。"オレの彼女見るなぁ~"てね。」
あれっ⁉そういうのがヤキモチなんだぁ。
だったら唯のも?
だから女の子が先生のこと見てるのが嫌だったんだぁ!
な~んだぁ。
これがヤキモチなんだぁ。
恋って面白い。
小説の中だけって思ってたことが…
こんな少しの間で、唯の身にも心にもドンドンおこって来るんだもん。
ホンの一ヵ月前までは、しらなかったことばかりだよ。
「だったら…唯のもヤキモチなんですね。恋愛小説みたい‼」
唯の言葉を聞いて、吹き出す先生。
「ホント、唯ちゃんといたら…今までにない経験が出来るよ。」
「今までにない経験って…?他の人と何が違うんですか?」
「う~ん…そうだねぇ~。
別に、沢山の人と付き合った訳じゃないからね。
他の人と比べる訳でもないから、ヤキモチは妬かないでね。
なんていうかなぁ~。…唯ちゃんって…純真で擦れてないから…う~ん…。
あっ!そうそう。…中学の頃の初恋の気分なんだよね。」
「う~ん…分からないです。それって…子供ってことですか?」
「子供は園に沢山いるでしょ?でも、子供は彼女にしたいなんて考えないよ。
子供っていうのとは違ってて…
オレが中学生に戻った気分?
スマートに対応できないっていうか…。
少なくとも、簡単に手が出せないって思うんだ!
泣きそうで怖いっていうか…泣かせたくないっていうか…。」
……………??………?……。
そういうと先生は一人で納得したみたいで、ケラケラ笑ってるの。
唯には全く分かりませ~ん!
子供とは思われてないみたいだけど…今までの彼女とは違うってことだよねぇ?
初恋みたいって…
唯は今がまさに初恋なのになぁ~。
一人グルグル考えてる間に、家から二時間掛かった目的地に無事到着。
かなりの遠出だったなぁ~。
出発の時は、"遠出"って聞いて…バスの時みたいに会話がなかったらどうしよう~って
不安に思ったけど…先生と沢山話して、普段は知らない先生を知ることが出来て
楽しかったなぁ~。
途中、長旅だから…疲れないか心配したけど
普段園バスに乗りなれてる先生には、大したことではないんだって。
ホントにスゴい‼
むしろ、あまり車を使わない和也さんを心配してミラーで確認してたの。
……やっぱり先生って…かっこいいなぁ~。
駐車場に車を停めて、合流したら…尋ちゃんが大荷物を抱えてた。
玄関に向かうと、『日帰り温泉』って聞いてたから…旅館を想像してたのに
レジャー施設のような、近代的な建物だった。
「ここ…??」
隣でしっかり唯の腕を掴んでる尋ちゃんに聞くと
「うん!そう‼
お姉ちゃん、早く行って着替えるよ‼
先生と和くんは着替えてここで待ち合わせねっ。
じゃあまた後でねぇ~。」って強引に引っ張られた。
「えっ⁉何で水着なの?温泉でしょ?」
「ここは温泉レジャー施設。水着で入れる温泉だよ。
滑り台だって、流れるプールだってあるんだから!早く着替えよう!!」
「えっ…だって。水着持ってきてないもん。」
「大丈夫‼お姉ちゃんのも、ちゃ~んと持ってきてあるよ!
大荷物で大変だったんだから~」
尋ちゃんが持ってきてくれたのは…唯の水着。
去年買ったピンクの花柄。
レースとリボン使いが可愛いくて買ったもの。
でもね
これを着て先生のところに行くんでしょ?
無理だよぅ~
だからさっきトイレで"ブルーになってる?"って聞かれたんだぁ。
「尋ちゃ~ん。お姉ちゃん恥ずかしくて…無理だよぅ。」
「大丈夫‼サッサとしないと置いてくよ。」
黒のビキニに着替えた尋ちゃんは大人っぽくて…
とても今月高校を卒業したばかりには、見えないよ。
慌てて着替えて追いかけると…先に着替えた先生達が待っていた。
「ほ~ら、早く!
もぅ~お姉ちゃんがグズって大変だったんだよ。
先生、お姉ちゃんの事お願いしま~す。和くん行こう‼」
尋ちゃんはサッサと和也さんの手を取って行っちゃった。
パーカーの前をしっかり握りしめて立っていたら…
「ごめんね。…オレも…唯ちゃんには無理だよって言ったんだけど…。
さっき、温泉ならいいって言ってたから…大丈夫なのかなぁって…。
ホント………ごめん‼」
先生が悪くないのは…分かってる。尋ちゃんの強引さに押されただけ。
初めてのデートがダブルデートになったのも、そのせいだしね。
先生は悪くないんだよ。
別に怒ってもないの。
………ただ…………恥ずかしいの!………。
ナイスバディな尋ちゃんのビキニ姿を見た後で…脱げないよ~。
幼児体型の唯のビキニ姿なんて…先生、笑っちゃうよぅ…。
上目遣いで先生を見たら…情けなさそうな…先生の顔。
「あの、先生は悪くないから…。でも…ビキニっていうのは…。
日帰り温泉って聞いたから、尋ちゃんと二人で入るんだって思って。
先生と一緒とは、思ってなかったから…。
あっ…あのねっ。嫌っていうか…恥ずかしくて。
唯は胸もないし…幼児体型で…。
尋ちゃんみたいに色気もないから…あの…だから…恥ずかしくって…。」
「うん。分かってる。
あっ!別に、尋ちゃんと比べて分かってるって言ってないよ‼
恥ずかしいのは…分かってるって意味だからね‼
初めから、唯ちゃんが泳ぐなんて思ってないよ。だから大丈夫‼
要は、二人でいられたら良いんだから。」
そう言って、ベンチに座った。
そう言えば…遠足の動物園のベンチで、初めて先生の隣で話したんだよね。
あの頃は…先生のことがめちゃくちゃ怖くて、ビクビクしてたんだっけ!
今は…先生の隣が、誰よりも安心する。
「ねぇ~先生?
先生は、今日のデート…楽しみだった?」
「そりゃ~もちろん‼
唯ちゃんに長~く、片思いしてたからね。
こんな時間があるなんて…今でも信じられないんだよ。
昨日なんて、遠足の前日よりも荷物チェックしちゃったもん。
今度は、二人で行けたら良いなぁ~って思ってる。
さっき中学生の初恋みたいって言っただろう?
多分、こんな時なんだよね。…そう思うのって…。
二人のデートが夢なんて…いい大人が、変だよね?
でも…そう思うんだぁ。
こうやって、ちょっとづつ唯ちゃんと近くなるのが、凄く幸せで嬉しいんだ。
恋を育ててるのは…実は、オレなのかもしれないねっ。」
先生の言葉は、ホントに優しい。
いつも自分のことしか考えてない唯のことを…優しく包み込んでくれるの。
"Ok!やったぁ‼美味しいものを期待してるよ。"
"この間出来たイタリアンのお店に行きたいって伝えてね。お腹を空かせておく"って。
"お昼のランチよりもディナーが良いかも。"って…皆好き勝手言ってる。
ちょうど休憩のためにサービスエリアに止まったから、先生にメールを見せてあげたら
「うわぁっ!これはかなりの出費になりそう…。まぁ唯ちゃんのお友達は
大切にしないとねっ。」って笑ってた。
先生…ホントに奢るつもりなのかなぁ~?
唯も出した方が良い?
どうしたら良いのか悩んでたら
「彼女に払ってもらうくらいなら、初めから誘いません。」って鼻をギュッっと。
痛いなぁ~って擦りながら上目使いで見たら
「オレってそんなに情けない?」って笑ってた。
あっ!
これが、この間彩ちゃん達が言ってた"男のプライド"?
う~ん。難しいなぁ。
結局…甘えた方が良いのかなぁ?って思って
「お願いします。」って。
先生に促されて車から降りると、尋ちゃんと和也さんが手を繋いで近づいてきた。
「ねぇ~お姉ちゃん。少し早いけどお昼にしよう。早めに食べてお腹の消化を早くしたいんだ。」
??……消化を早く?
訳の分からない会話に疑問を持ちながらも、先生もお腹を空かせてるみたいだから
「うん」って賛成した。
…しっかし…
付き合って二年ともなると、二人でいるのが自然なんだなぁ~。
手だって…恋人繋ぎしてるもん。
チラッと先生を見たら目が合って…「何?」って目で聞かれた。
手を繋いだ二人を見ると
"あぁ~"って納得したみたいで…"する?"って目で聞かれた。
"無理だよぅ"って首を横に振ったら、笑って隣を歩いてくれた。
平日のサービスエリアは、それ程人が多くないみたい。
定年を迎えた夫婦や、春休みだからかカップルや女の子同士のグループが少しいる。
二人で並んで歩いていたら
"ねぇ~あの人‼"
"わぁ⁉かっこいい。"
"隣の女って…彼女かなぁ"って、女の子三人組の会話が耳に入った。
こっちをチラチラ見るから…きっと先生の噂をしてるんだよね?
先生って、かっこいいからなぁ~。
モテるんだよね…。
唯って…子供っぽいから…どう見られてるんだろう??
妹⁉
同じ10歳差でも…尋ちゃん達は、ちゃんと恋人に見れるのに…。
唯ももっといっぱい先生と居たら、そんな風に見られるようになるのかなぁ?
なんだか隣を歩く先生が、急に遠くに感じて淋しくなった。
やっぱり…手を繋いだら良かったのかなぁ?
そうしたら、彼女に見えたかな??
女の子達の視線が気になって、ホンの少しブルーになってしまった。
先生達に席を頼んで、尋ちゃんと二人でお手洗いに行くと
「ねぇ~お姉ちゃん‼これから何処に行くか聞いた?」って
「ううん。
出発の時に聞いたけど、あやふやになってまだ聞いてない。」
「なんだぁ。それで元気がないのかと思ったのにぃ。違ったんだ~。
だったら、着いてのお楽しみ!」
ニッコリ鏡越しに笑って、サッサとお化粧をなおしに取りかかった。
先生達のところに戻って、軽めの昼食を取るとまた出発。
「あのね、先生。
さっき尋ちゃんに"行き先を聞いたから元気がないのか?"って聞かれたんだけど…
何処に行くの??…まさか‼唯の怖がるところ??」
「怖がるって?」
「遊園地とか……。」
「違うよ、日帰り温泉だよ。」
「な~んだぁ!お風呂なんだ。良かったぁ。」
「あれっ⁉お風呂が好きなの?」
「好きって言うか…
温泉って、蛇も絶叫マシンも暗いところもないから怖くないかな?って…
遊園地や映画は、怖いからダメなんです。
でも…尋ちゃんは、面白がって直ぐに連れて行きたがるから…。」
「唯ちゃんが嫌がってないなら良かった。
"着くまで内緒にして下さい"って、尋ちゃんにお願いされて困ってたんだぁ。
それより…元気がなかったのはどうして?まさか、オレの運転で酔った?」
「えっ⁉それはないです。
先生はいつも安全運転で上手だから、みんな"心地良い"って言ってます。」
「だったら?」
「あっ…あの…えっと…。…………なんとなく…………??」
「なんとなくでブルーにはならないよ!
なぁ~に?? 言ってごらん。
オレが答えるまでしつこく聞くのなんて、経験済みでしょ?」
「うん。…あのねっ。あの…」
さっき先生のことを見てた女の子のことや
モテる先生が、少し遠くに感じて淋しかったことを話した。
「それならオレと同じだよ。オレもしょっちゅう思ってる。
佐藤先生の時だって、唯ちゃんに色々聞くのが嫌だったし、保護者だって分かってても
お父さん達に、ニコニコ笑って挨拶するのを見るとイライラするし。
今だって、唯ちゃんが嫌がったから手は繋がなかったけど…
チラチラ見てた男たちには"オレの彼女"って分かるように、なるべく近くを
歩いていたから。」
えっ⁉先生でもそんなことを考えるの?
驚いた顔で見ていたら……
「男だってヤキモチくらい妬くよ。"オレの彼女見るなぁ~"てね。」
あれっ⁉そういうのがヤキモチなんだぁ。
だったら唯のも?
だから女の子が先生のこと見てるのが嫌だったんだぁ!
な~んだぁ。
これがヤキモチなんだぁ。
恋って面白い。
小説の中だけって思ってたことが…
こんな少しの間で、唯の身にも心にもドンドンおこって来るんだもん。
ホンの一ヵ月前までは、しらなかったことばかりだよ。
「だったら…唯のもヤキモチなんですね。恋愛小説みたい‼」
唯の言葉を聞いて、吹き出す先生。
「ホント、唯ちゃんといたら…今までにない経験が出来るよ。」
「今までにない経験って…?他の人と何が違うんですか?」
「う~ん…そうだねぇ~。
別に、沢山の人と付き合った訳じゃないからね。
他の人と比べる訳でもないから、ヤキモチは妬かないでね。
なんていうかなぁ~。…唯ちゃんって…純真で擦れてないから…う~ん…。
あっ!そうそう。…中学の頃の初恋の気分なんだよね。」
「う~ん…分からないです。それって…子供ってことですか?」
「子供は園に沢山いるでしょ?でも、子供は彼女にしたいなんて考えないよ。
子供っていうのとは違ってて…
オレが中学生に戻った気分?
スマートに対応できないっていうか…。
少なくとも、簡単に手が出せないって思うんだ!
泣きそうで怖いっていうか…泣かせたくないっていうか…。」
……………??………?……。
そういうと先生は一人で納得したみたいで、ケラケラ笑ってるの。
唯には全く分かりませ~ん!
子供とは思われてないみたいだけど…今までの彼女とは違うってことだよねぇ?
初恋みたいって…
唯は今がまさに初恋なのになぁ~。
一人グルグル考えてる間に、家から二時間掛かった目的地に無事到着。
かなりの遠出だったなぁ~。
出発の時は、"遠出"って聞いて…バスの時みたいに会話がなかったらどうしよう~って
不安に思ったけど…先生と沢山話して、普段は知らない先生を知ることが出来て
楽しかったなぁ~。
途中、長旅だから…疲れないか心配したけど
普段園バスに乗りなれてる先生には、大したことではないんだって。
ホントにスゴい‼
むしろ、あまり車を使わない和也さんを心配してミラーで確認してたの。
……やっぱり先生って…かっこいいなぁ~。
駐車場に車を停めて、合流したら…尋ちゃんが大荷物を抱えてた。
玄関に向かうと、『日帰り温泉』って聞いてたから…旅館を想像してたのに
レジャー施設のような、近代的な建物だった。
「ここ…??」
隣でしっかり唯の腕を掴んでる尋ちゃんに聞くと
「うん!そう‼
お姉ちゃん、早く行って着替えるよ‼
先生と和くんは着替えてここで待ち合わせねっ。
じゃあまた後でねぇ~。」って強引に引っ張られた。
「えっ⁉何で水着なの?温泉でしょ?」
「ここは温泉レジャー施設。水着で入れる温泉だよ。
滑り台だって、流れるプールだってあるんだから!早く着替えよう!!」
「えっ…だって。水着持ってきてないもん。」
「大丈夫‼お姉ちゃんのも、ちゃ~んと持ってきてあるよ!
大荷物で大変だったんだから~」
尋ちゃんが持ってきてくれたのは…唯の水着。
去年買ったピンクの花柄。
レースとリボン使いが可愛いくて買ったもの。
でもね
これを着て先生のところに行くんでしょ?
無理だよぅ~
だからさっきトイレで"ブルーになってる?"って聞かれたんだぁ。
「尋ちゃ~ん。お姉ちゃん恥ずかしくて…無理だよぅ。」
「大丈夫‼サッサとしないと置いてくよ。」
黒のビキニに着替えた尋ちゃんは大人っぽくて…
とても今月高校を卒業したばかりには、見えないよ。
慌てて着替えて追いかけると…先に着替えた先生達が待っていた。
「ほ~ら、早く!
もぅ~お姉ちゃんがグズって大変だったんだよ。
先生、お姉ちゃんの事お願いしま~す。和くん行こう‼」
尋ちゃんはサッサと和也さんの手を取って行っちゃった。
パーカーの前をしっかり握りしめて立っていたら…
「ごめんね。…オレも…唯ちゃんには無理だよって言ったんだけど…。
さっき、温泉ならいいって言ってたから…大丈夫なのかなぁって…。
ホント………ごめん‼」
先生が悪くないのは…分かってる。尋ちゃんの強引さに押されただけ。
初めてのデートがダブルデートになったのも、そのせいだしね。
先生は悪くないんだよ。
別に怒ってもないの。
………ただ…………恥ずかしいの!………。
ナイスバディな尋ちゃんのビキニ姿を見た後で…脱げないよ~。
幼児体型の唯のビキニ姿なんて…先生、笑っちゃうよぅ…。
上目遣いで先生を見たら…情けなさそうな…先生の顔。
「あの、先生は悪くないから…。でも…ビキニっていうのは…。
日帰り温泉って聞いたから、尋ちゃんと二人で入るんだって思って。
先生と一緒とは、思ってなかったから…。
あっ…あのねっ。嫌っていうか…恥ずかしくて。
唯は胸もないし…幼児体型で…。
尋ちゃんみたいに色気もないから…あの…だから…恥ずかしくって…。」
「うん。分かってる。
あっ!別に、尋ちゃんと比べて分かってるって言ってないよ‼
恥ずかしいのは…分かってるって意味だからね‼
初めから、唯ちゃんが泳ぐなんて思ってないよ。だから大丈夫‼
要は、二人でいられたら良いんだから。」
そう言って、ベンチに座った。
そう言えば…遠足の動物園のベンチで、初めて先生の隣で話したんだよね。
あの頃は…先生のことがめちゃくちゃ怖くて、ビクビクしてたんだっけ!
今は…先生の隣が、誰よりも安心する。
「ねぇ~先生?
先生は、今日のデート…楽しみだった?」
「そりゃ~もちろん‼
唯ちゃんに長~く、片思いしてたからね。
こんな時間があるなんて…今でも信じられないんだよ。
昨日なんて、遠足の前日よりも荷物チェックしちゃったもん。
今度は、二人で行けたら良いなぁ~って思ってる。
さっき中学生の初恋みたいって言っただろう?
多分、こんな時なんだよね。…そう思うのって…。
二人のデートが夢なんて…いい大人が、変だよね?
でも…そう思うんだぁ。
こうやって、ちょっとづつ唯ちゃんと近くなるのが、凄く幸せで嬉しいんだ。
恋を育ててるのは…実は、オレなのかもしれないねっ。」
先生の言葉は、ホントに優しい。
いつも自分のことしか考えてない唯のことを…優しく包み込んでくれるの。