恋愛覚悟
別れと出会いと別れと。
「大恋愛をすること」。

人を純粋無垢に好きになること。その人の顔を思い出す度に、熱いエネルギーを感じること。

計算や遠慮をせずに、見返りを省みずに、好きになること。人生で一番自分の魂がピュアになる瞬間を実感すること。
両思いになれば、それでもいいし、片思いであればそれでもいい。

それが、自分の財産になる。そう思えるのは私が大恋愛を20代でしたからだ。

大恋愛の相手、りょうちゃんとの出会いは、胸を張って人に言えるものではなかった。つきあって3年経った彼と別れた後、もう二度と恋愛なんてしないと心に誓い落ち込んでいた頃の出来事だった。

その出会いは、所謂、ハズレのデートの後にやってきた。友達の紹介で、まじめで優しい社会人を紹介された。

その人と銀座にて二人で食事をした。決して、お酒は強くないが、お酒でテンションを上げるしかない渋いデートだった。

 デートした帰りに、「次は、ドライブにでかけない?」と誘われて、適当にはぐらかした。断るのは、エネルギーがいるし、是非、行きたいと嘘をつくのも良心が痛む。

 夏のむし暑い夜だった。これからもう一件いけそうな夜の11時半過ぎ。

 すみませんと、スーツを着た仕事ができそうな男性が横からそっと声をかけてきた。

「もし、よければ一緒に軽く飲みに行きませんか?」何を隠そう、完全なナンパだった。普段なら、スタスタ歩いていくのに、その日は妙に、少し話してみたいという衝動に駆られてしまっあ。

 駅の改札口の前で、30分くらい話し、彼も一つ隣の駅に住んでいたことが分かり、電車で一緒に帰ることになった。

会話が楽しかった。人と話すのが楽しいと感じたのは、どれくらいぶりだっただろうか。

数十分前の渋いデートで気を使って疲れたのであろうか?或いは、自分を好きかどうか不安だった元彼とつきあっていた時に、一緒にいながら、彼の顔色を伺いながら喋る癖がついてしまっていたからであろうか?人と会話のキャッチボールすることが、こんなに純粋に楽しいことだったことを忘れていた。

笑った。

笑った。

笑った。

 彼の喋るスピード、間合いの良い相槌、リズム感のある突っ込みやボケ。

ときどき見せる大人の表情とときどき見せる少年の顔。

もっと話したい。

電車が家の最寄り駅にあっという間に着いて、降りる時、彼が「もう一件飲みにいかないか?」と聞いてきた。

私は、出会ったばかりの彼とこれ以上つきあってしまう自分が恐ろしくなり、働く女性の常套手段「明日は、朝が早いから今日は無理かも」作戦をつかった。

「じゃあ連絡先だけ知りたい」と粘る彼。

断れず、Line IDを交換した。

今日これから飲みに行くなら、連絡先を教える自分の方がまだ許せたのだ。

のちのち彼に、出会ったこの日に、連絡先を交換したことについて注意をされ怒られた。彼はずるい。

帰り道すでに、市川さんからのメールを待っている自分に気がついた。

元彼と別れてからというもの、携帯のメールを待つなんてことをすっかり忘れていたので、ちょっと嬉しくなりつつ、こんなに一瞬で元彼との思い出の喪中からの復活できるなんて、自分でも驚いた。
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