恋愛覚悟
恋愛ジェットコースター
メッセージのやりとりをし、それから、私たちはその同じ週の金曜日に、六本木のゴージャスなホテルでデートをした。

レストランでの会話は、楽しかった。

また、美しくエスコートしてくれる市川さんのスマートさに気持ち良さを感じ、市川さんのことを知りたくて、もっと話をしたくて、ご飯を食べることを忘れるくらい夢中で話を聞いて、そして夢中で喋った。

支払いを見せないスマートなお会計で、「この人ステキ!」と、盛り上がりそうな気持ちに気がつかないふりをするので、精一杯だった。


「ベタだけど、展望台とか行ってみる?」と、誘いを受け展望台へ。


「あ~なんて、皮肉なんだろう。元彼が元彼女と会っていたのが、発覚した場所。六本木の展望台。そこに来ているなんて。」頭の中は、元彼モード入り。

元彼とは、この元彼との六本木展望台事件が、きっかで別れ話が急速に進んだ。

自分に自信がなくなったきっかけの場所、この事件が私の心に影を落とし、不安にし、彼を束縛するという最低な行為に走らせたのだ。


綺麗な景色が一気に、不愉快な色に変わった。

傷をえぐられる思いで、展望台を歩いていると、前を歩いていた市川さんが、「はいっ」と後ろにいた私に手を出してきた。

何も言わずに、市川さんの手ひらに、私の手をのせた。

ドキドキも何もなかった。ただ、私の心の中は、元彼を忘れたい。そんな強い単純な思いだった。市川さんは、どんどん私を引っ張り、少し暗くて静かな場所へ導き、その近くのソファで腰を下ろした。


どうでもいい話をしていたと思う。
いや、なんか話していたが元彼のことが気になりだして、上の空だった。

でも、気がついたときには、さっきの明るい市川さんとは雰囲気が違っていた。

すごくセクシーに見えた。いつの間にか、彼の香水を感じる距離になっていた。都内の夜景にぴったりの香りだった。


展望台からの都内の静かな景色に、さっきレストランで飲んだアルコールが体内をめぐり、彼の心地よい声と香水の香りに包まれた。次の瞬間、彼の大きい手が私の頬に触れ、気がつくと彼とキスをしていた。


ビックリするといった感情はなく、誰かよく知らない相手と「今」キスをしている自分に、罪悪感とドキドキでいっぱいの気持ちになっていた。


彼の女性慣れしているだろうこのペースについていけない自分を感じた。そんなとまどっている私にはおかまいなしで、彼は、「呼び方、りょうちゃん」でいいよ。と、どんどん距離を縮めてくる。苦しい!でも、彼が恐ろしく刺激的だった。


それから彼と週2回くらい会う日もあった。私は気がついていた。彼が好き。きっとナンパで出会った彼なんてやめなさいと、誰もが言うかもしれない。でも、彼が好きだった。

彼と会えない時は、東京の夜景を見て、思い出していた。彼と見た夜景を。そして、感じていた、彼もこの夜景の中のどこかにいるのだと。それだけで充分満たされた。
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