想いはシャンパンの泡とともに
「ギムレット……そんなに高い度数のカクテルを飲んで大丈夫ですか?」
少しだけ低い声が聞こえて、再びハッと隣の彼を見た。私の手元にあるグラスは既に空。無意識に空けてたらしい。
「だ、大丈夫です……」
「でも、もう顔がずいぶん赤い。普段から飲みなれてはないでしょう?」
「……」
何だろう、このひとは。仕立てのいいスーツを着て長身でこれだけ顔が整っていれば、恋人なんているだろうに。なんでこんな平々凡々な私に声を掛けてくるんだろう?
(もしかして……フラれて自棄になってるから、簡単に抱けるとでも思ってるかもしれない)
一瞬、気持ちが揺らいだ。
4年間付き合った相手に簡単に捨てられた私。いいえ、もしかすると恋人ですらなかったかもしれない。そんな私に何の価値があるんだろう。一時とはいえこんなイケメンに相手にしてもらえるならラッキーかもしれない。
……でも。
ギュッ、と私は胸元のペンダントを握りしめる。
“雪ちゃんの笑顔がまた見たい”――幼い声が自然にこころに甦る。
負ける、もんか。
「……ありがとう、大丈夫です」
たとえひきつっていようと、笑顔を浮かべ彼にきっぱり言い切った。