想いはシャンパンの泡とともに
大丈夫だ、と。いつもいつも私は自分に言い聞かせてきたし、周りにもそう公言してきた。
両親が私に無関心で育児放棄されても。周りから理不尽な要求ばかりされても。大丈夫と笑顔で過ごしてきた。
自分を殺して周りに合わせて生きる。そんなの私には当たり前だった。恋人ですらなかった聡にだって……私が笑顔で大丈夫と言えば、みんな安心した。よかったと言いながら。
だけど――
スッ、と目元を滑ったものが男性の指と認識した刹那。彼はなぜか痛ましい瞳で私を見た。
「……そんなに強がらなくていいのに」
まるで、こちらを憐れんでいるように見えて。私は思わずかっとなった。
「つ、強がってなんか……私、平気です! ギムレット……ください!」
怒鳴るように再度注文すると、バーテンダーは苦笑いをしてカクテルを作り始めた。
だけど、隣の彼がとんでもないことを告げる。
「君の顔に輝くのは涙でなくて笑顔であって欲しいんだ。だから――」
聞きたくなくて追い立てられるように飲んだから、その後彼が何を話したかなんて憶えてない。しばらくして、意識が落ちていったのだから……。
「雪ちゃん!」
懐かしい声に、呼ばれた気がした。