想いはシャンパンの泡とともに
「いいよ、雪ちゃんのためだから」
そう言葉を紡いだ彼は、ぱっちりと目を開けて私を見上げる。
やっぱり懐かしいような瞳に、私は思わず訊ねてた。
「あの……なぜ私の名前を?」
「なぜ、だろうね?」
フッと表情をほどいた彼に、どうしてか胸が痛む。伸びた手が私の肩を掴みいきなり彼の胸の中に飛び込む形で抱きしめられ、カアッと顔に血が集まった。
彼もバスローブを着てるとはいえ……ほとんどはだけてて。つまり素肌にそのまま顔をつける形に……。
「つらい時は休んでいいんだ。君はずっと頑張ってきた……ぼくはわかってるから」
ぽんぽん、と背中を叩かれて。広い胸の中で彼のぬくもりと、そのたくましさを感じて……どうしてかぽろりと涙がこぼれた。
人前で泣くな、と自分に言い聞かせてきたのに。なぜこの人のそばだとこんなにも安心できるんだろう。
「……思いっきり泣いて。ここには誰も居ない……ぼくはただのホットマットだから、好きなだけ泣いて休むといい」
彼のそんな言い分に、思わずクスリと笑った。
「ホットマットは喋りませんから」
「そうだったっけ……失敗したかな」
苦笑いを浮かべた彼の柔らかい栗色の毛が触れたくなって、思わず手を伸ばしたけど。彼は他人だからと押し留める。
彼のぬくもりに包まれながら、いつの間にか微睡みに身を委ねてた。