11時30分に解ける魔法
「ありがとう、添真。
 てもね、こんな奇跡、起きるはずなかったの。
 そもそも私、願ってなかったんだから、添真と喧嘩した、この夜をやり直したいなんて」

 そう言うと、添真は渋い顔をする。

「俺とやり直す気はないってことか……?」

「そうじゃなくて。
 喧嘩する前からやり直しても意味はないと思っていたの。

 そんなことしても、私たちは、きっとまた同じように喧嘩する。

 どんなひどい喧嘩をしても、それを乗り越えていかなきゃ意味がないって思ってたの。
 ずっと一緒に居たいのなら」

 添真は黙って聞いていた。

「夕方ね。
 おねえちゃんと庭を歩いたの」

 夕暮れの明かりに照らし出されたライトアップ直前の庭は、それはそれで美しかった。

 巨大迷路になっているという綺麗に刈り込まれた生け垣の前を品の良い老夫婦が手を繋いで歩いていた。

 それを見た莉音は、なんだか、ほっとする光景だ、と思ったのだ。
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