11時30分に解ける魔法
 ちょっと迷ったあとで、莉音はベッドから降りた。

 広すぎるインペリアルスイートのベッドからそのソファまでは距離があり。

 そこに居る添真の呼吸音もなにも感じられなかったので、やっぱり、これは夢かな、と思ってしまう。

 クリスマスイブ。
 ようやく日本に帰ってきた添真と、この部屋で過ごすはずだった。

 だが、途中でいつものように喧嘩してしまった私は部屋を飛び出し、あれから添真には会っていない。

 壁の大きな鏡に自分の姿が映る。

 真っ赤なミニのドレスを着ているが、それは、あの日、着ていたものと同じドレスだった。

 添真の許に行った莉音は、
「ねえ、添真。
 これは夢?

 だって、もう二度と会わないって言ったのに……」

「誰がだ?」
「私よ」

「いつ?」
「クリスマスイブの夜に」

 すると、添真は、
「イブは今夜だろう?
 吞み過ぎておかしな夢でも見たんじゃないか?」
と言ってくる。
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