別れるための28日の蜜日
そうらしてだきしめられていたら、すっかり馴染んだ匂いと優しく髪を撫でてくれる大きな手に包まれて、なんだかほわほわと胸いっぱいに幸せが溢れて来た。

1ヶ月もかけて別れる計画立てたのに、いっぱい泣いちゃうくらい苦しくて、町田さんや香苗にだって凄く迷惑かけたのに。
こうやってプロポーズされて抱き締められただけであっさり計画放棄しちゃうなんて、ダメ過ぎじゃないだろうか。


「百合はさ、何にも変わらなくていいから。百合が嫌なら一族の付き合いだってしなくていいし、仕事上の付き合いだって奥さんを連れて来ない人もいるから大丈夫だし。
イナガキの専務じゃなくて『稲垣律人』と結婚してよ」


あぁ、やっぱり。こんな風に言われたら離れられない。

「それは私を甘やかし過ぎじゃない?」

「いいんだよ。俺にとって大事なのは社交の場に連れて行ける結婚相手見つける事じゃなくて、山内百合と結婚する事なんだから」

「でも、それじゃ結婚するメリットがないよ」

「メリット?百合と結婚出来る以上に俺にとってのメリットなんてないよ」
< 133 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop