別れるための28日の蜜日
もうひとつの2月27日 side町田
「お疲れ様ー」

荷物運びの手伝いを終えて山内さんのマンションを出た僕に声をかけた彼女は、僕の乗ってきたワンボックスにもたれてひらひらと手を振っている。

「やっぱり来てたんだ。で?僕は斉藤さんが望んだ通りに動けた?」

「もちろん。十二分に働いて頂けて、本当に感謝してます」

にっこりと笑うのを見て思う。


なるほど、男子社員の評価ってのもあながち間違ってないもんだな。


『口説くには相当な覚悟を必要とする人事の美人』の斉藤香苗の笑顔は、彼女が一筋縄ではいかない人物だと教えている。

「山内さんには直接会わないんだ?」

「ええ。そんなことしなくても計画は上手くいきそうだし」

「計画‥‥ねぇ」

「ふふっ。そんな顔しなくても、私の計画は単純明快で短期決戦だから計画変更もないですよ。百合みたいに無計画でも無鉄砲でもないですし、私」
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