別れるための28日の蜜日
自分の部屋に私を置いて、律人は仕事に戻っていった。

「さて、まずは荷物の整理しなきゃ」

シワにならないように洋服を掛けようとクローゼットを開けて、驚いた。前に着てたツルシとは明らかに違うブランドのスーツ達。

そんな事は専務になったんだから当然なんだろうから驚く事じゃない。私が驚いたのは着こなしてる律人の事。
急にこんな高級スーツ着たら、着られてる感半端ないはずなのに‥‥。

「律人、やっぱり凄いね。頑張ってるんだ」

スーツの袖に軽く触れながら、ここにはいない律人を労わる。

当然のように着こなしてるって事は、スーツに似合うオトコになってるって事だもんね。

でもそれは簡単な事じゃなかったはずだ。いっぱい努力して苦労して。
なのに私にはそんなトコ1度も見せなかった。愚痴もこぼさなかったし、弱さも感じさせなかった。

「‥‥‥ごめんね」

しばらくクローゼットを眺めた後、私は荷物の整理を再開させた。
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