別れるための28日の蜜日
リビングに向かいながらポツリと言う律人に頷く。

一人暮らしが長くなると、待ったり待ってもらったりって感覚、忘れちゃってるんだよね。

「お昼ご飯、食べた?まだならなんか作るよ」

背中に話しかけると、ピクッと反応した。

「あ、うん‥‥ごめん、お昼はいいや。朝が遅かったからさぁ」

朝が遅い?出張に行ってて朝が遅いって事あるんだろうか?

首を傾げつつ、「はぁ」と気の抜けた返事をした。とりあえず、昼ご飯はいらないって事は変わらない。

「昨夜、接待で酒の席が遅くまであってさ。で、今朝は寝過ごしちゃって」

視線を逸らしながら言葉数が多い言い訳って‥‥なにやら怪しいとは思うけど、出発の時も秘書さんがマンションまで迎えに来てたし、出張だったのは間違いないはずだ。

なんだろ、重役ともなると出張もその辺の社員とは違うんだろうか?

なんだかすっきりしないけど、そう考えて自分を納得させた。

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